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マイクロソフト業界別の記事

ビルの窓越しに見えるオフィス風景

 

新内閣発足以来デジタルトランスフォーメーション (DX) が注目されています。その様な中、そもそも国民へのどのようなサービスがデジタルを使って提供されるべきなのか (されると良いのか) についてマイクロソフトが国内外を通じて得た知見を元にご紹介いたします。

日本でも “サイバー空間 (仮想空間) とフィジカル空間 (現実空間) を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会” として「Society 5.0」が数年前には提唱されていましたが、残念ながら国民へのサービスとして提供され定着しているレベルのものは少なく、この度のコロナ禍で図らずもその状況が露呈することとなりました。さまざまな昨今のデータを見ても “デジタル” 人材、“データ活用”、“ワンストップサービス” などあらゆる分野でここ 5 年の日本の地位の下落は著しく、代わって中国の台頭は目覚ましい状況です。政府だけではなく国民自身も何とかしなければというモチベーションが上がってきていると感じます。

Tech Intensity

Tech Intensity

「Tech intensity」とは、テクノロジーを素早く適用していく「Tech adoption」と、その適用を進めるためのスキルや人材、選択肢によってつくられる「Tech capability」の組み合わせから成る造語で、マイクロソフト CEO のサティア・ナデラが提唱したものです。テクノロジーが社会に受け入れられるための信頼性も加わることで、Tech Intensity はより高まっていくと考えられます。まさしくこの Tech Intensity を高めることが国・社会をよりよくし、イノベイティブで少しワクワクするような社会形成に繋がるでしょう。では、どのような分野で Tech Intensity を高めるべきでしょうか。

注力分野

1.Enable remote government access リモートアクセスを有効に

まず政府職員がどこに居てもどこから働いていても国民が必要とするサービスを提供できる能力。加えて、国民が必要な手続きや利用したいサービスをオンラインで利用し、背後で自動的な処理で完結することで、生産性、利便性というメリットを享受できることになる能力。このような能力があれば、ボタン 1 つで引っ越し諸手続きが完了するなど、さまざまな具体的なユースケースが想定でき、最も国民がデジタル化を実感できる分野もここだと考えられます。コロナにより行政側のテレワークなどが随分と進み、働く環境は整いつつありますが、仕事のやり方や会議の在り方、またテレワーク時の人事評価の仕組み、デジタルを使う能力やツールを評価する能力など文化的な側面においてはまだ成熟度が低いのが現実だと認識されます。単に時短ではない働き方改革を本気で取り組むことが、真のリモートアクセスによる価値を実現させ、定着化させることに繋がると考えます。

2.Empower cross agency collaboration 組織横断コラボレーション強化

ここでは、国の省庁間に留まらず、地方自治体、民間も入れたコラボレーション関係の強化について考えたいと思います。

プライバシーやコンプライアンスを守る前提に立ち、データ分析を活用して、実用的で予測に基づくインテリジェントな (気の利いた) 市民サービスを提供するためには、まず現在顕在化しているサイロ化したデータの持ち方から変える必要があるでしょう。ご存知の通り今や人が動く = データが生まれ、都市全体からも次々とデータが生み出されています。単に貯めこむだけではなく、安全に先進的な知力即ち AI などのテクノロジーを使って利活用することが迅速にできれば、今回のようなコロナ禍においてもより迅速で的確な決断ができていたと予想されます。公的機関と民間組織の間で政府のデータを安全に接続して共有し、多様なサービスの需要に迅速かつインテリジェントに対応できるようにするためのデータ基盤が必須となります。

日本ではマイナンバーを基礎としてオンライン教育・医療、地域防災などを提供する所から産官学イノベーションや地球規模で環境問題に取り組む所まで活用は多岐に渡ります。そのために国と地方+民間企業も連携してデータを貯めて使えるようにすること、AI などで分析して即断即決して対応すること、長期的な計画をデータに基づいて進めること、そして結果を分析して次に活かしていく半永久的な継続的改善活動 (デジタル フィードバックループ 下図参照) を提案したいと考えます。基盤は社会からの多様な要求に迅速に応えるためにもクラウドが必要であることは間違いないと考えます。

 

デジタルフィードバックループ

 

3.Deliver trusted and secure services 信頼されたセキュアな環境

利便性と引き換えにセキュアで無くなることはあってはなりません。国民が安心してアクセスし利便性よく使う為に、第一に個人情報と組織間で共有される情報を保護すること、そのための国民からの信頼を高め規制やコンプライアンス要件を満たすことが必要で、それを国民にも分かり易く説明することが重要です。運用の継続性やサイバー レジリエンスの強化、レガシー システムの最新化などの取組みを迅速に行い、安全で回復力のある環境を提供する必要があります。

サイバー セキュリティなどリスクは存在しますが、ゼロ トラストなどの設計思想を取り入れ、常にリスクに対抗し得る柔軟なインフラにする必要があります。リモートワークを始めとしてオンラインで提供される各種サービス (教育、医療、災害支援など) は国民の安心安全な生活のためには欠かせないものなので、従来のように “繋がなければ安全” という思想ではなく繋がっていても安全で信頼性のある環境を設計、提供、そして常に監視・見直しをすることが公共の信頼を維持することに繋がります。

下図はいずれもデジタル庁の注力分野ですが、これまで申し述べてきた DX の注力分野とは以下のようにマッピングすることができます。1 番はコロナ禍リモートワーク定着、2 番はマイナカード普及/利活用検討、3 番にはデジタル基盤構築ですが、これは、1 番 2 番においても共通となります。同じく、DX 推進/カルチャー変革のための方法・対策検討もすべてを考える上での共通項となるでしょう。

Empowering governments注力分野

 

具体的に進めるためには

政府であれ、企業であれ、やらなければならないことは理解できても、どうやってやるのか、どのような順番でやるのか、誰がやるのかを考えることが一番難しいでしょう。

マイクロソフトは世界で一番自らの DX をひたすらにやり続けている会社、と自負しています。ウィンドウズ一辺倒、製品主体にサイロ化された文化や競争原理などから脱却し、クラウド中心、ウィンドウズだけではないオープンソースへの最大の貢献者になった経験や、グロースマインドセットで他者の成功への貢献をする文化醸成など、文字通り 180 度の方針転換をして改革した経験です。失敗の連続から学んだ経験を通して我々が今の時代に推奨しているやり方をご紹介したいと思います。

1.Why Transform なぜ変革が必要なのか

認識されているニーズ (国民が求めているニーズ) は何であるかを共通に理解し、変革の必要性を推進しているのは何かについて考えることをまずはやるところから始めていきます。

仕組みが古い、組織がカルチャーショックを起こしている、コロナなどの社会的なプレッシャーが変革しなければならない理由となるでしょう。またこれまではできなかったことでも価格的に手の届く範囲になった IoT 技術や AI に代表される様な先進技術などの技術革新も、変革を大きく促すでしょう。

2.What kind of Transformation discussion? どんな変革をしようか?

変革の理論的根拠を広範かつ具体的にした上で、では、自分の組織が現在どこにあり、どこに行きたいと思うかを考えて、まず自分たちの「シナリオ」を作ってみることが必要です。

”Imagine if…“ という発想でまずは制約をすべて取り払って考え、ディスカッションしてみましょう。どのようなテクノロジーを使うか・使えるか、現状はどうか、進める上でのブロッカーは何か、についてはその過程において抽出できるので、思い悩まずにまずは想像してシナリオを考えてみることをお勧めします。

3.How to transform?  どうやって?

ここでは、5 つの検討ポイントをお伝えします。

  1. ビジョンを作る
  2. ソリューションをデザインする
  3. ソリューションを作ってみる
  4. 継続的改善の仕組みを考える
  5. 必要なトレーニングやサポートを考える

実際にモックアップを作って使い勝手を検証したり、これまでの様に何年もかけて大きなシステムを設計構築するのではなく、いわゆる “DevOps” スタイルで開発する時の手法と一致します。特に日本の中央政府においては馴染みが無い方法だと思いますが、民間や市民の助けを借りてでも “やってみる” ことが今回の日本における DX の大きな一歩に繋がると考えます。

このような手法の具体例についてはまた別稿でお伝えしていきたいと思います。

最後に、政府はこの度の改革を遂行するためにも、まずは勇気を持って新しい手法を使ってやってみて欲しいと思います。そこでの失敗の経験はむしろその先の成功への一歩と考えて取り組むべきでしょう。国民側もそのような視点で改革を見ていくことが求められます。もちろん、透明性の確保や、そのための説明責任は果たしてもらいたい。日本にとっての大きな文化的改革でもある DX をぜひ成功させたいと強く思います。