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マイクロソフト業界別の記事

電子カルテを入力する医師

人工知能 (AI)、機械学習 (ML) の実社会での実装を推進するためのコミュニティであり、日本マイクロソフトが幹事を務めるDeep Learning Lab (ディープラーニング・ラボ) では、2021 年 2 月 20 日 (土) の午前 10 時から、「DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える」と題したオンラインシンポジウムを開催します。シンポジウムの共同主催者である千葉大学医学部附属病院病院長企画室総合調整員の亀田義人先生に、開催の背景や見どころを伺いました。

 

千葉大学医学部附属病院病院長企画室総合調整員 亀田 義人 先生

千葉大学医学部附属病院病院長企画室総合調整員
亀田 義人 先生

DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える

Information

「DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える」
日時: 2021 年 2 月 20 日 (土)
午前の部 ハンズオン: 10:00 開始 12:30 終了
午後の部 セッション&パネルディスカッション: 13:00 開始 18:15 終了
場所: Microsoft Teams (オンライン開催)
参加申し込み: こちらから

目次

Deep Learning Lab (ディープラーニング・ラボ) とは?
ヘルスケア分野における AI の可能性
「DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える」の見どころ
参加者へのメッセージ「階段を一段昇る機会に」

Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)とは?

――ディープラーニング・ラボについてお聞かせください。
日本マイクロソフト ヘルスケア担当 清水教弘 (以下清水) 2017 年に、人工知能 (AI)、機械学習 (ML) の、実社会での実装を推進することを目的として設立されたコミュニティです。技術の進化に伴って形態を少しずつ変えてきてはいますが、リテール、ヘルスケアといったさまざまなインダストリーにおける AI の社会実装を推進するために、医療従事者、IT 事業者、ヘルスケア事業者、データサイエンティスト、IT エンジニアなど、各方面のステイクホルダーへの情報共有、複数企業同士での AI プロジェクト実証実験を主な目的としています。

亀田先生 今後、ヘルスケア分野において AI は避けて通ることのできないツールになります。私は 2017 年に厚生労働科学研究「保健医療用人工知能の技術革新と国際競争力向上に資する人材育成に関する研究」に参画することになり、病院の意思決定層向けの教育プログラムをつくろうと考え、そのプログラムで使用する教材づくりや私自身の AI リテラシー向上のための情報収集を行うなかで、ディープラーニング・ラボに出会いました。その後、ディープラーニング・ラボのなかにヘルスケア分科会を立ち上げて、ステアリングコミッティーの一員として活動しています。

 

ヘルスケア分科会の写真

――ディープラーニング・ラボの活動にはどんなことを期待されていますか?

亀田先生 ヘルスケア業界は労働生産性が低い業界として知られており、他業界に比べて IT 化が遅れています。ディープラーニング・ラボでは、AI というテーマをもとに、ヘルスケア業界の IT 化を推進するためのきっかけのひとつにしたいと考えています。また、一般に IT を導入しても投資金額に見合うほど生産性が向上していないというデータがあり、「ソロー・パラドックス」と言われています。単に「IT 化を進めること」が重要なのではなく、「どう IT 化を進めるか」が生産性向上の鍵であり、重要となります。後者を DX (デジタルトランスフォーメーション) と言い換えてもよいかもしれません。ひとつよくある事例を挙げると、電子カルテの開発現場において、病院はあらゆる作業を電子カルテひとつで完結したいと考え、もともとシンプルだった電子カルテに複雑な機能を上乗せすることを希望して開発業者に依頼します。ところが、開発業者が病院のニーズを過剰に尊重した結果、非常に多額のコストを上乗せしたにもかかわらず複雑で扱いづらいものができあがってしまいます。これは業務とテクノロジの間での最適化、「すり合わせ」ができていなかったことが一因です。ヘルスケア人材とIT人材が1 か所に集まり、お互いのリテラシーを高め、このような「すり合わせ」をしていける場を、ディープラーニング・ラボでつくっていけないかと考えています。

日本マイクロソフト 製品担当 樋口拓人(以下樋口) 第三次 AI ブームと言われて 10 年ほどが経とうとしていますが、社会的な実装はなかなか進んでいない実態があります。いくつか理由はあると思いますが、知識や技術の共有は大きな課題であり、これらをコミュニティベースで共有し、推進していくことはとても重要です。このディープラーニング・ラボで、医療従事者、IT ベンダー、技術者といったステイクホルダーの皆さまと、ビジネス事例や新しいアルゴリズムの共有といった情報の共有を進めて、シナジー効果を高めていければと思っています。

ヘルスケア分野における AI の可能性

――医療分野において、AI に代表される IT 化はどのような効果をもたらすとお考えでしょうか?
清水 テクノロジカンパニーである日本マイクロソフトでは、3 つの効果を期待しています。1 つめは「医療の質の均てん化」です。医療従事者の持つ暗黙知を見える化し、共有することで、より質の高い医療サービスを提供できるよう、臨床の現場でのテクノロジによる支援を目指します。2 つめは「医療現場の改革」です。ドキュメント作成や構造化文章の作成などの業務に AI や先端技術を活用することで、医療従事者が、より多くの時間を使って患者と向き合えるようにご支援します。3 つめは「ヘルスケア連携」です。多職種間で医療データを安心・安全に共有する仕組みをご提供することで、病院、ドラッグストア、製薬企業といった医療機関を結び、医療の質と効率を上げることができると考えています。

亀田先生 今まさに、医療機関においても働き方改革が必須になっていますから、DX (デジタルトランスフォーメーション) の推進はとても重要です。その一連の流れのなかで、AI は大きな比重を占めてくる。私も、循環器内科医として救急医療に携わったなかで長時間勤務の経験があり、体力、気力を削がれる環境では質の高い医療サービスを提供するのは非常に困難だということを、身をもって理解しています。また、マネジメントに携わる立場としても、超高齢社会において現場の負担が増加する中、このままだと持続可能性が無く、病院の運営が立ち回らなくなるという危機感は常に感じています。ハード面におけるテクノロジの進化はもちろん、ソフト面においても、AI の活用による働き方の効率化への期待は大きいと思います。

 

より良い医療の形の図

「DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える」の見どころ

――今回「医療×AI への参入障壁を乗り越える」をテーマにした理由をお聞かせください。
亀田先生 本シンポジウムは 2019 年から始まって過去 2 回開催されています。初回は医療従事者を主な対象に、AI を知ってもらうことをテーマとした「AI 推進人材」をテーマに据え、第 2 回は医療業界と工業業界の交流の場として「AI×地域包括ケア」をテーマとしました。2 回とも大変好評で、たくさんのご参加や反響をいただきました。そこから見えてきたのは、当初は保守的なのではないかと予想していた医療業界が、実は AI に興味津々で、さまざまな学会で AI 分科会が立ち上がるなど、AI 導入に対して前向きな状況にあるということでした。
一方で、参加企業からはいまだに参入障壁を強く感じるという意見が上がってきていました。実際に、守秘義務やプライバシー保護の問題、法律、倫理指針やガイドラインなどのレギュレーションの複雑さといった、クリアしなければいけない問題があることは確かです。医療側は普段の業務で忙殺されているので、新しいテクノロジがこれらのレギュレーションをクリアしているかどうかを判断する余裕はありません。そうなると、開発側はなにを基準にしてよいかわからないし、どこに相談すべきかもわからない。医療者にとっても、レギュレーションをクリアしているかわからないものを進めるわけにはいかない。その結果として、医療業界への参入が進まないのではないかと考えています。

樋口 それならば、先行企業の実例や、レギュレーションをつくっている側の声を紹介することで、障壁を下げることができないか、ということで決まったのが今回のテーマ「医療×AI への参入障壁を乗り越える」になります。

 

2020年シンポジウムの様子

2020 年シンポジウムの様子

――シンポジウムの見どころを教えてください。
亀田先生 どの講演も興味深い内容になると思いますが、なかでも厚生労働省の高江慎一氏による講演は私も楽しみにしています。レギュレーションを設定する立場である厚生労働省が実際のところどんなことを考えているのか。障壁が高いと感じていたレギュレーションが実はそうでもなかったり、思ったより手厚い支援が受けられたり、行政としても医療業界における AI 導入を推進しようとしていることがお分かりいただけると考えています。大変貴重なお話が聞けることは間違いありません。
もうひとつの見どころは事例の紹介です。先行企業等が障壁をいかに乗り越えたのか、あるいはいま抱えている課題はなんなのか。そういった情報を共有することで、今後参入しようという企業が増えるかもしれないし、もしかしたら参加者のなかから課題の解決策が生まれてくるかもしれません。
また、今回は完全オンラインイベントである点にも注目しています。場所に囚われずに参加できますから、これまで遠方で参加できなかった方にもご参加いただけます。私としては、そこから新たな繋がりが生まれることを期待しています。

樋口 ディープラーニング・ラボは、これまで情報発信を中心とするコミュニティでしたが、もっとインダストリーに特化していかないと AI の社会実装は進まないのではないかとも感じています。業界のニーズを汲み取り、きちんと活用されるソリューションを目指して、Tips や必要な情報を取りまとめて共有できるようなシンポジウムにしていければと思っています。

清水 このシンポジウムは、医療業界における新しいエコシステムをつくる第一歩だと思っています。今後、テクノロジを武器に持ち、医療の質の向上や働き方改革を目指す企業にとってはとても有意義な場所になると思います。

参加者へのメッセージ「階段を一段昇る機会に」

――このシンポジウムへの参加を考えている方にメッセージを。
清水 これまで医療分野に関わってこなかった企業からすると、医療はかなり身構えてしまう分野だと思っています。ただ、医療分野の産業構造を変えるためにも、医療分野を中心に活躍してきた企業だけではなく、分野外の企業に入ってきてもらう必要があります。このシンポジウムには、ぜひ非医療系の企業、特にテクノロジオリエンテッドな企業に参加していただき、参加者同士でのディスカッションを通して輪を広げていただきたいと思っています。

樋口 AI や ML、DL の根幹はデータにあります。質の高い情報がどれだけ集まるかによって、その価値が高まってくる。そういう意味においては、医療業界とは非常に相性がいいと感じています。研究領域のデータの蓄積はもちろん、業務データも貯まっている。AI や ML、DL が活躍できる領域だと思うので、このシンポジウムをきっかけとした革新的な技術がグローバルに展開していくことに期待し、日本マイクロソフトとしてもその支援をしていければと思っています。

亀田先生 このシンポジウムでは、さまざまなステイクホルダーに参加していただくことで、皆さんの課題を解決する筋道を示したいと思っています。これをきっかけに医療業界に参入してみようという企業が増えたり、これから先を考えるチームのメンバーが集まってきたりすると、具体的なイメージが湧いて、前に進むことができるのではないでしょうか。参加される皆さまが階段を一段昇り、少し新しい景色を眺めることができる会にしたいと思います。

Information
「DLL Healthcare Day 2021 医療×AI への参入障壁を乗り越える」
日時: 2021 年 2 月 20 日 (土)
午前の部 ハンズオン: 10:00 開始、12:30 終了
午後の部 セッション&パネルディスカッション: 13:00 開始、18:15 終了
場所: Microsoft Teams (オンライン開催)
参加申し込み: こちらから

Profile
亀田 義人 (かめだ よしひと)
佐賀大学医学部を卒業後、千葉大学医学部附属病院循環器内科に入局。同大学大学院医学薬学府環境健康科学専攻循環器内科学博士課程修了後、厚生労働省へ出向 (雇用均等・児童家庭局母子保健課 課長補佐、医薬食品局血液対策課 課長補佐)。現在、千葉大学医学部附属病院病院長企画室総合調整員、病院経営管理学研究センター特任講師、千葉大学予防医学センター特任助教。社会医学系専門医・指導医。