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マイクロソフト業界別の記事

第 3 回 デジタル アドバイザリ サービス本部 チーフデジタルアドバイザー 田澤 孝之

今、国内外問わず自動車メーカーは、劇的な産業の構造変革の必要性に迫られています。新興国市場の急拡大で自動車販売のニーズがあるものの、米州、欧州を中心とした低炭素社会の流れ、ZEV (Zero Emission Vehicle) 規制強化、それに伴う EV 技術の進化により、参入障壁が下がり異業種企業など新たなプレイヤーの業界参入も進んでいます。こうしたビジネス環境の劇的な変化に対応していくには、ビジネス視点、徹底的な顧客視点に立ったデジタル トランスフォーメーションの推進が不可欠です。

ここではマイクロソフトのデジタル アドバイザリ サービスがご提案した事例を紐解きながら、今後の自動車業界に必要なアプローチをご紹介します。

日本マイクロソフト株式会社
エンタープライズ & パートナー サービス統括本部
デジタル アドバイザリ サービス本部
チーフデジタルアドバイザー
田澤 孝之

プロフィール
国内ベンダーのメインフレーム用 OS に関する開発エンジニアとして、IT 業界におけるキャリアをスタート。スタートアップを含むミドルウエアベンダー、Linux、Hadoop の OSS ディストリビューターを経て外資大手 IT ベンダーでエンタープライズ アーキテクトとしてデジタル トランスフォーメーションを促進、その後マイクロソフトに入社。

10 社にものぼるその会社遍歴の中で、エンジニアやセールス、製品エバンジェリストなど多様な職種を経験。そこで蓄えた豊かな知見をベースに、総合的な視点から顧客ビジネスと IT の最適なコーディネートを支援している。趣味はバイクとクルマ。「デジタルの時代にこそアナログな顧客視点が大切」というのがモットー。

LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/ttazawa/

■自動車の設計・製造工程のデジタル化が前提条件に

戦後、日本の製造業を屋台骨として支えてきた日本の自動車業界。自動車が ECU を 100 以上搭載するようになりスマホ化する中で、ここでも他の業界と同様に、IoT (Internet of Things) や人工知能 (Artificial Intelligence)、ビッグ データ、クラウドといったデジタル技術をどのように活用していくかが重要なテーマとなっており、各自動車メーカーや部品サプライヤーも、デジタル トランスフォーメーションに向けた取り組みを加速させつつあります。

その具体例の一つが、設計から製造に至る工程のデジタル化です。クルマを設計開発し、市場に供給するメーカーにとって、リードタイムの短縮や品質と効率のさらなる向上は常に重要な課題となっています。上流の設計から生産までの各フェーズにデジタル技術を適用し、これまで一部アナログ プロセス、現場、現物で行っていた領域まで含め、全体を通して可視化することで、多くの課題を解消していくのがその狙いです。

例えば、設計時のクルマのデザインをブラッシュアップするために多大な手間とコストをかけて行っていたクレイモデルの作成に、3D CAD や 3D プリンタ、さらには仮想現実 (Virtual Reality)、複合現実 (Mixed Reality) を活用するといったアプローチもその一つでしょう。さらに、仮想的なデジタル空間の中で各種検査をシミュレートしたり、組み立て工程において、あたかもツインズ (双子) のように現実世界を模したシミュレーション空間を構築する「デジタルツイン」によって工程の管理や制御を精緻化したりする取り組みも進められています。「デジタルツイン」の考え方は設計、製造、保守全ての工程において活用が可能です。

■"つながるクルマ" で利用者に新たな価値を創出

もちろんデジタル トランスフォーメーションは、設計・生産工程といったメーカー側の枠組みだけにとどまりません。それは利用者に対してもデジタル技術による大きなインパクトが及ぶことになります。その最たるものが「コネクテッドカー (つながるクルマ) 」と呼ばれる世界です。

これまではインフォテイメントと事故時の緊急コールに活用されてきたコネクテッドカーも、これからはオートノーマスカー (自動走行車) の実現を目指してのデザインが進んでいます。多種多様なセンサーを搭載したクルマがネットワークにつながり、ハンドル操作やブレーキ操作などの走行情報や燃料消費にかかわる情報、あるいは GPS から得られる位置情報などをクラウド上にビッグ データとして収集・蓄積。AI 等による解析で導き出された結果をドライバーにフィードバックし、渋滞などの道路情報の把握から効率的な移動に役立てたり、ドライバー自身の安全走行に役立てたりしていくものです。

併せて顧客経験 (カスタマー エクスペリエンス) 向上の 1 つの手段として予兆保守の取り組みも進んでいます。クルマの情報がネットワークを通じてリモートで収集されれば、クルマの日々の稼働状況をつぶさにモニタリングして故障発生の予兆を捉えることが可能です。これにより、ユーザーに適切なタイミングで車両の点検・修理をするように促せます。これについては、すでにいくつかの自動車メーカーが、その実現に必要なシステム基盤を整備し、新たなサービス スキームの運用を実際に開始しています。

いずれにせよ、そうした新たな価値を提供するクルマや、必要となるプラットフォームをいかに実現していくかも、今日の自動車業界にとっては、避けられない課題となっています。

■対象となるペルソナを明確化することが取り組みの起点に

こうした課題に対しマイクロソフトのデジタル アドバイザリ サービスでは、お客様がそれぞれに抱える課題をどう解消していくかという視点はもちろん、デジタル化の潮流が自動車業界に及ぼすインパクトを総体的に捉え、いかなるサービス モデル、ビジネス モデルのエンビジョン、青写真を描いていくべきかという視点からの包括的なご支援も行っています。

そうしたご支援の際、問題領域の如何にかかわらず、解決の糸口として重要なことがあります。それは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、対象とするペルソナを明確化し、課題と機会を明確化することです。つまり「誰」のために「どのような問題解決ができるか、すべきか」を提示するのか明確化するわけです。

例えばトラックの OEM メーカーならその解決すべき相手は誰でしょうか。自分たちのトラックを購入してくれる輸送業者様でしょうか、ドライバーでしょうか。それともバリュー チェーンのさらにその先、つまり最終的な荷主様、言い換えると物流のバリュー チェーンで料金を支払うお客様でしょうか。もしも輸送業者様が、よりよい価値を荷主様に提供するために困っているのであれば、トラックを通して荷主様に何が実現できるのかという発想にたったモノづくり、コトづくりになり、次々に新たなアイデアというものが生まれてきます。これが我々のサービスの根幹を成している、いわゆるデザイン思考による人間中心設計アプローチです。

■業界最先端のデジタル トランスフォーメーションの推進を支援

それでは、デジタル アドバイザリ サービスが、お客様にどのようなご提案をしているのか。その具体的な事例にも触れておきたいと思います。

ドイツのダイムラーグループの傘下にある三菱ふそうトラック・バス様は、アジア市場を中心に、商用車 (トラック・バス等) のブランドとして確固たる地位を築いています。同社では現在、「Connected X」というコンセプトを掲げ、お客様とのより良い関係性の構築、社員の生産性向上、自社のトラックや物流などのデジタル化によるビジネス変革などを柱とする業界最先端のデジタル トランスフォーメーションの推進を目指されています。

参考事例: 三菱ふそうトラック・バス株式会社の AI、IoT や Mixed Reality を活用した デジタル トランスフォーメーション推進を支援

マイクロソフトのデジタル アドバイザリ サービスでは、このような一連のデジタル トランスフォーメーションの取り組みにかかわる、お客様のビジネス課題からのアイディエーション、ビジネス シナリオ策定、最新テクノロジーを活用した解決手段の提案、導入までを一貫してサポートしています。

三菱ふそうトラック・バス様における取り組みのいくつかをご紹介します。1 つ目が AI を活用したチャット ボットの導入です。これは、社内ヘルプデスクにチャット ボットを導入し、問い合わせの多い質問 (FAQ) に対して、適切かつタイムリーな回答を提供することで、業務の効率化を図ろうというもの。これにより、お客様ヘの回答までに要する時間を短縮し、回答内容の均質化が可能になります。

また同社では、コネクテッドカーの手法により、その提供するトラックやバスをクラウドと接続することで、車両の位置や燃料の残量などをリアルタイムに把握して、トラブルを未然に防いでいるほか、配車センターとの情報共有を行うためのシステム「Truckonnect (トラックコネクト)」を IoT 技術の活用により実現。こちらは、2017 年 10 月 1 日からすでに実運用が開始されています。こうした仕組みにより、同社車両のユーザーにおける効率的な輸送や円滑な車両整備が可能となるわけです。

さらに同社では、MR (Mixed Reality: 複合現実) 技術を用いた、開発、デザインやカスタマー サービスの変革にもチャレンジしています。MR (複合現実) はいわば VR (仮想現実) と AR (拡張現実) の良いとこ取りをした考え方で、現実空間と仮想空間を重ね合わせた新たな空間の構築を実現するものです。マイクロソフトでは、そうした MR 技術を Windows 10 を搭載した自己完結型のホログラフィックコンピューターである「Microsoft HoloLens」により提供しています。三菱ふそうトラック・バス様はこの製品を採用し、設計者やエンジニアが設計イメージや実際の車両イメージなど、3D データで視覚化された情報を確認することで、車両の設計・開発や予兆保全を含めたメンテナンスなどの業務にかかわるプロセスを一変させ、作業の効率化や製品やサービスの品質向上に役立てていこうとしています。

このような取り組みをご支援すべくデジタル アドバイザーがお客様の課題解決のためのエンビジョニング ワークショップをご提供させていただき、ビジネス課題の洗い出しから新しいデジタル トランスフォーメーション推進施策をお客様と共に策定し、デジタル トランスフォーメーション プロジェクトを継続してご支援しております。

冒頭にも述べましたが自動車業界においては、若者の車離れなどの要因で先進国での需要が停滞する半面、新興国の需要が急拡大するなど市場環境が急速に変化しています。併せて、ガソリン車から EV へといった製品構造の転換についての変化の波も押し寄せています。さらに、そうした状況にあって、自動車製造の参入障壁が下がったとも言われ、異業種企業など新たなプレイヤーによる業界参入が活発化していくことも確実です。

そのような中で日本の自動車メーカーが生き残っていくためには、決してテクノロジー視点からではなく、顧客中心デザイン、顧客経験価値向上、顧客の問題解決を主軸にして、ビジネス デザインを行ったうえで、インテリジェント エッジとインテリジェント クラウドを組み合わせデジタル トランスフォーメーションを推進することが不可欠です。マイクロソフトのデジタル アドバイザリ サービスでは、そうしたお客様の取り組みに多大な貢献を果たしていくことをミッションに、今後もサービスの拡充を図ってまいります。

関連リンク

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