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マイクロソフト業界別の記事

今私たちが依存している食料生産システムが今後も長期にわたって持続できるかどうかが危ぶまれています。米国の農務長官によると、増加の一途をたどる人口に食料が行き渡るためには、農業において過去 1 万年に匹敵する規模のイノベーションが今後 40 年で起こらなければなりません。こうした理由から、世界の未来を見据えた持続可能な農業への取り組みが今、重要視されています。

環境や健康に悪影響を及ぼさずに持続的に食料を生産するための活動が、農業の分野で革命を起こそうとしています。環境保護、飢餓対策、食の安全確保、持続可能な開発の取り組みに熱意を注いでいる人たちが、農業の可能性を解き放ちつつあります。

私は先日、このような強い情熱を抱いた人々の驚くべき仕事ぶりを直接目にする機会がありました。5 月 15 日~ 16 日に開催された国連の Multi Stakeholder Forum on Science, Technology and Innovation for the Sustainable Development Goals (SDG)、通称 “STI フォーラム” でのことでした (英語)。

私はそのフォーラムで参加者に、テクノロジがどのように UN SDG をサポートしているかについて話し、スマート農業や持続可能な水処理への取り組みの具体例を挙げて、収穫量の増加や水消費量の削減などで実際に成果をあげている事例を紹介しました。

急成長する AgTech 業界

この業界の勢いは、目に見えて増しています。農家が作物の品質を向上させ、収穫量が増え、収益拡大が実現したという話を聞かない日はありません。

このような取り組みを後押ししているのは何でしょうか。鍵を握っているのは、作物管理の進化です。食料生産の過程で大量のリソースが消費され、絶えず脅威に直面している状況に、作物管理の進化が大きな影響を与えているのです。現在、世界の真水の約 70% が農作物栽培に使用され、多いときで作物の 40% が雑草、病気、害虫の被害に遭っています。もしも農家がかんがいを最適化し、農地を監視して害獣対策を施し、害虫や病気から作物を守ることができれば、生産性がどれほど高まるかは容易に想像できるでしょう。

マイクロソフトとパートナーは、人工知能、コグニティブ コンピューティング、モノのインターネット (IoT)、ビッグデータ、高度な分析における画期的な開発と、ソーシャル エンゲージメントの広がりを通じて、AgTech イノベーションという夢を、あらゆる規模の企業の手の届くものに変えつつあります。

気候変動の影響を受けている農家をサポート

食料問題を解決しようという熱い思いは、世界中のマイクロソフトの従業員も共有しています。マイクロソフトが長年続けている持続可能性への取り組みを個々の状況で実践し、テクノロジやイノベーションの活用を通じて環境問題に取り組んでいる従業員の事例 (英語) が数多くあります。

Prashant Gupta はマイクロソフトのクラウド + エンタープライズを担当する主任ディレクターで、彼自身の出身国で変化を起こすことに情熱を傾けています。彼はマイクロソフトに働きかけ、国連機関、国際半乾燥熱帯作物研究所 (ICRISAT)、インドのアーンドラ・プラデーシュ州と連携して、ピーナツ農家がかんがいに対処するための支援を提供するよう促しました。

Gupta と彼のチームは、高度な分析と機械学習を、マイクロソフトがコンピューティング テクノロジ分野で達成している技術進歩と組み合わせて活用するソリューションを開発し、気候変動の影響を受けている農家を支援するためのパイロット プログラムを立ち上げ (英語) ました。このプログラムには、気候条件や土壌などの指標に基づいて種をまくのに最適なタイミングを農家に助言する種まきアプリが含まれています。

2016 年 6 月、種まきアプリのデータは、種まきを 2 週間遅らせたほうがよいことを示しました。その助言に従った農家は、従来の日程を変えずに種をまいた農家に比べて、1 ヘクタールあたりの収穫量が平均 30% 上回りました。農家はこのような種まきに関する情報やその更新を (スマートフォンではなく) 携帯電話に送信されるテキスト メッセージで受け取ることができます。この価値あるパートナーシップと示唆に富む成功事例の詳細については、こちらのビデオ (英語) をご覧ください。

食品廃棄物を低減

オランダでマイクロソフト サービス デリバリ マネージャーを務めている Dirk de Jong は、先進技術と分析の力で環境問題の解決に貢献できることを示す良い方法がないか探していました。彼は、マイクロソフトのカフェテリアで出る食品廃棄物を減らすのに役立つアイデアを思いつきました。この問題は、レストランのオーナーや配膳業者、環境保護に取り組む人たちにとっても、大きな懸念事項です。毎日廃棄される食品の量を減らすことができれば、コストやリソースを大幅に節約できるだけでなく、エコロジカル フットプリント (環境に与える負荷) を最小限に抑えることにもつながります。

Dirk は、マイクロソフト データ プラットフォーム コンサルタントの Dennis Eikelenboom と協力して、Hutten Catering (英語) 向けに、データから日々の業務に関する実用的な洞察を導き出すアプリケーションを開発しました。現在、Hutten では推測には頼らず、Microsoft Power BI のダッシュボードを使用して、曜日と来店者数の予測や天気を組み合わせて、売り上げやよく売れている商品などの食品消費に関するパターンと実績を見極め、調達効率の向上や日々のメニューの調整に役立てています

リアルタイム アシスタントを現地で提供

Microsoft Internet of Things (IoT) パートナーである DunavNET (英語) は、agroNET (英語) というスマート農業ソリューションを通じて農家にさまざまなメリットを提供しています。Microsoft Azure IoT を基盤として構築された agroNET は、モジュラー式のコンポーネントで構成され、設定不要ですぐに使用できるクラウド サービスとして提供されます。農業に関する幅広い専門知識が使いやすい形式で利用できるよう設計されています。この農業向けのデジタル ツールセットには、Azure SQL Database が搭載され、長年にわたって蓄積された土壌や作物に関する知識が組み込まれているほか、正確なデータをリアルタイムで記録、分析できるセンサーとゲートウェイも含まれています。農家はこのソリューションが示すデータを、穀物のかんがいのタイミングや病気のコントロール方法、害虫駆除をするべき場所といった有益なフィードバックとして活用できます。

セルビアの製糖工場に、agroNET にまつわるすばらしい成功事例があります。この工場では、agroNET スイートを使用して、砂糖の原料であるテンサイの栽培方法を改善しました。土壌が含む水分量を計測するためのセンサーと、地域の天気予報、作物モデルを組み合わせて、適切なタイミングで適切な量の水を作物に与えるのに役立てています。その結果、収穫量は 30% 増え、水の消費量は 20% 減りました。DunavNET のスマート農業ソリューションの詳細については、こちらのケース スタディ全文 (英語) をご覧ください。

ゲノミクスで作物を改良

Nicola Bonzanni という研究者は、別のイノベーション事例 (英語) に取り組んでいます。Nicola は子ども時代から抱いていた自然とテクノロジへの強い興味に突き動かされて、今はコンピューター科学とエンジニアリングの分野の進歩を生物学的問題の解決に応用しようとしています。彼の興味深いこの事例は、まず癌の研究から始まり、同様の技術を Research as a Service を使ってすべての生物に適用することへと進展しました。彼が使用している Web ベースのツール、ConBind.org では、Microsoft Azure Batch サービスが備えるオンデマンドのスケーラビリティが利用されているため、ユーザーは生物情報学に関する複雑なクエリを手軽に短時間で実行することができます。

Nicola は現在、農業バイオ テクノロジの分野で世界をリードしている企業の 1 つ KeyGene と協力して、作物の改良に熱心に取り組んでいます。ゲノミクスを応用して、耐病性や寿命など、作物の品種改良において注目に値する主要な特質を特定しています。彼らは、ConBind ツールを植物ゲノミクスに用いて、農家が耐乾性の植物を作り、収穫量の増加や作物の栄養価の向上といった恩恵を得られるようにしようと計画しています。

KeyGene との共同研究以外にも、Nicola は新しいプロジェクトとして、Microsoft BizSpark プログラムの支援を受けて ENPICOM というスタートアップ企業を立ち上げました。目標は、ソフトウェア エンジニアリングと生命化学を組み合わせて、”生き物のインターネット” サービスを構築することです。Nicola の取り組みについては、こちらの 2 分間のビデオ (英語) をご覧ください。

世界中の研究室にいる 1,000 名を越える科学者やエンジニアが連携している Microsoft Research (英語) は、10 年以上にわたってゲノミクスに取り組んでいます。マイクロソフトのコンピューティング アプローチでは、数々の飛躍的進化が実現しています。ゲノム配列解析では、Azure クラウン コンピューティングを使うことで、主要な解析が 7 倍高速になっており、医師がまれな病気や危険な病状に対して 28 時間かかっていた診断が 4 時間に短縮されています。このような進化が、食料生産の健全性と効率性の向上に対する Nicola の取り組みや KeyGene との共同研究においても重要な進歩をもたらしているのを見ると、興奮を禁じ得ません。

協同組合の農家が新しい経済を創出

農業の分野には、世界をより良くするためにたゆまぬ努力を続けている科学者、エンジニア、企業家の事例がたくさんあります。5 月 10 日~ 12 日に開催された Microsoft Build 2017 イベントでは、マイクロソフトのワールドワイド コマーシャル ビジネス担当エグゼクティブ バイス プレジデント Judson Althoff (英語)が、Land O’ Lakes がデジタルトランスフォーメーションを実現して 130 億ドル規模の農業ビジネスを確立するための支援をマイクロソフトが提供したことについて話しました。同社では、以前は 1 エーカーあたり約 130 ブッシェル (約 3.3 トン) のコーンがとれた土壌から、現在は約 500 ブッシェルを収穫できるようになっています。しかも、最大限に持続可能な方法が用いられています。このようなイノベーションが、今まさに、新しい世代の農業を進化させているのです。

Judson はイベントで次のように言いました。「数世代にわたって農場で働いてきた農家と話すと、彼らは『祖父もこの農場で働いていた。私や父や祖父たちがこれまでずっと手作業でやってきたこの土から、コンピューターや人工知能を使うことで収穫が増えると言っても、私は信じられませんよ』と話しましたが、今ではそれが現実になっています。バターをデジタルの力で変革できれば、ビジネスでデジタルトランスフォーメーションを実現できるのです。」

持続可能な農業は、重要性が高まり続けている分野です。ここでご紹介した成功事例や、そこに登場する情熱を抱いた人々から、皆さんが私と同様に感銘を受けていただければ幸いです。デジタル テクノロジがビジネスや業界、コミュニティに変革をもたらし続ける限り、マイクロソフトはこのようなイノベーションに携わる人々を支援し、環境問題の解決や健康環境の改善、世界をより良くする活動への取り組みで多くの成果を達成できるよう、これからも取り組んでまいります。