メイン コンテンツへスキップ
業界

ブロックチェーンを活用してサプライ チェーンの回復性、トレーサビリティ、予測可能性を高める

港で貨物コンテナを積み込むクレーンを上空から写した写真

※本ブログは、米国時間 2020 年 12 月 17 日に公開された Improve supply chain resiliency, traceability, and predictability with blockchain の翻訳です。
※下記で紹介しているイベントコンテンツは、すべて英語で提供されています。

概要

「ここ数年で多くの新しいテクノロジがサプライ チェーン業界を変えています。しかし、トレーサビリティの欠如、特に原材料に関するトレーサビリティ、および複数の企業間のデータに対する信頼性の欠如など、問題は残されています。これらの問題や、クラウド ハードウェアのサプライ チェーンに存在する他の多くの課題を解決するために、私たちのチームは新しいブロックチェーンをベースにしたソリューションを適用しています。私は、この新しいテクノロジがすでに現実のものとなっていることを考えると、わくわくします。また、近い未来にこのテクノロジによって、鉱山からデータセンターまでのトレーサビリティが実現し、大きなコスト削減が継続的に行われることを想像すると、さらにわくわくします。この記事では、Yorke Rhodes が私たちのチームのブロックチェーン実装と、それがサプライ チェーンに光をもたらすユニークな可能性を持っている理由について説明します。」—Cliff Henson, CVP, Capacity, Supply Chain & Provisioning

マイクロソフトのクラウド サプライ チェーンは、予測可能性の高い大規模な方法で機能を提供し、お客様がより多くのことを実現できるようにします。私たちのチームはマイクロソフトのデータセンターのサプライ チェーン プロセス全体を管轄しています。これには、サーバー、ストレージ、ネットワークの計画、調達、構築、提供や、それらの最終的な使用停止、お客様向けの処理能力の管理などが含まれます。
長年にわたって、可視性、品目レベルのトレーサビリティ、予測可能性が欠如していたことにより、サプライ チェーンの運営に悪影響が生じていました。これは、世界で最も先進的なサプライ チェーン管理を導入している企業でも同様です。こうした悪影響は、支出の増大、エラー、不正のリスク、偽造品、紛争鉱物の使用などにつながります。マイクロソフトのブロックチェーン プラットフォームはこれらの課題に対応しています。品目を共有データ構造でデジタル化することによって、すでに数千万ドルの隠れたコストを見つけ出し、エンドツーエンドの品目レベルのトレーサビリティを向上させ、サイクル時間を短縮し、利益を拡大しています。
回復性の高いサプライ チェーンを計画、導入することによって、組織のサービスの回復性と収益性を高める方法 をご覧ください。

サプライ チェーン業界の一般的な問題

マイクロソフトの物理的な製品とデジタル製品の全体を通じて、偽造品がサプライ チェーンに入り込むリスクなど、多くの懸念事項があります。これらの懸念事項はマイクロソフトのビジネスとお客様に直接影響を及ぼします。こうした問題は、マイクロソフト製品の不適切にライセンスされたコピーが OEM ハードウェアに搭載される、マイクロソフトのデバイス ハードウェアやサーバーに偽造されたコンポーネントが紛れ込んでクラウド データセンターに配備されてしまうなど、さまざまな形で発生します。また、コンポーネントの品質の問題の根本原因を探ったり、サプライ チェーンや製造現場で問題のあるコンポーネントを隔離したり、それらを除去したりすることは、複雑で時間のかかる作業です。さらには、コンポーネント製造で使用された原材料の供給元を検証可能な方法で特定することは難しく、このことは紛争鉱物の使用というリスクにつながります。これらは、業界全体に存在する多くの一般的な問題の一部にすぎません。

 

鉱山からデータセンターまでのトレーサビリティ

あらゆるサプライ チェーンは、バリュー チェーンの企業のネットワークというコンテキストの中に存在します。したがって、これらの企業間でデータを調整したり、保存中や輸送中の商品の可視性を確保したり、商品、請求書、発注書、リベートに含まれる複雑な企業間関係を理解したりすることは、最低限の要件となります。サプライ チェーンに参加している企業がそれぞれシステムを考慮し、それがサイロ化してしまうこと原因で、プロセスの透明性と可視性を確保することは困難でした。各企業が企業の壁の内部でシステムの問題を解決しようとすると、相互接続されたシステムの脆弱なネットワークになってしまいます。その結果、サプライ チェーンの複数の層でデータの共有ビューが存在せず、多くの企業にとって、共有された一連のビジネス オブジェクトに基づいて仕事を行うことが困難になります。このような分断されたデータ サイロ間で調整を行うには多大な労力が必要になります。これは可視性の欠如につながり、俊敏性を損ね、コスト効率の向上を難しくします。

 

データセンターでクラウド ラックを配置

 

製造、出荷、保管、配送を通じてコンポーネント サプライヤーの在庫と財務状態のトレーサビリティを得ることのできる統合されたプラットフォームは、多くのサプライ チェーン技術者にとっての夢でした。こうしたプラットフォームがあれば、複数層のサプライ チェーンに従来から存在する可視性の問題が解決されます。こうした問題に取り組むためのテクノロジの準備は整いました。私たちは、鉱山からデータセンターまで、さらには利用終了時の処分まで、すべての経路でトレーサビリティを提供し、重要な素材や原材料の責任あるソーシングのための透明性を実現する道のりを進んでいます。

サプライ チェーンとブロックチェーンの邂逅

ブロックチェーンは、三者間、またはさらに多くの企業間で構成される複数層のサプライヤー関係の中で、品目の一意の特定、追跡、可視性、ロジックの共有を可能にする優れた特性を有しています。従来型の ERP システムは、二者間の関係の中で企業システムのサイロ化を解決するのに役立ちましたが、複雑なサプライ チェーンで典型的に見られるような三者間またはそれ以上の (N 層の) サプライヤー関係の中では可視性を確保できませんでした。ブロックチェーンのデータ構造と、ブロックチェーン ネットワークの N 層の参加者は、以前のアプローチでは実現できなかった可能性の扉を開きます。ブロックチェーンのデータに備わっている変更不可能という性質によって、企業間の対話は、紛糾するデータ調整ではなく、ビジネス問題の共同解決という次元に高められ、合意されたデータ上でのビジネス ロジックの共有という可能性が開かれます。

ブロックチェーンはサプライ チェーンのデジタル化の基盤を構成する

 

ブロックチェーンが基盤を構成する図: ブロックチェーンはサプライ チェーンのデジタル化の基盤を構成する

ブロックチェーンは、業界のユーティリティとなり、サプライ チェーンのデータ リポジトリとなる能力を秘めています。これにより、以前ならどのソースからも入手できなかったようなユニークな市場データが得られるなど、すべての参加者にメリットをもたらします。

技術的実装

マイクロソフトは、段階的な取引に結びついた各コンポーネントのデジタル ツインと、それに関連するドキュメントおよび情報を作成することによってパートナー、業界、サプライ チェーンを支援するソリューションを構想してきました。そのため、マイクロソフトは最初から 8 社の主要サプライ パートナー (Arrow、Lenovo、Wiwynn、ZT Systems、Micron、SK hynix、その他) と緊密にコラボレーションを行ってきました。これら各社とマイクロソフトは、サプライ チェーンに革新的なデジタル変革をもたらすというビジョンを共有しています。このプラットフォームは、これらのパートナーによって基礎をなすネットワーク コンソーシアムに基づいて設立されました。これにより、すべての参加者間でメリットが共有され、同期されたプロセスや技術的なアップグレードが実現します。
マイクロソフトはアクセンチュアと共同でブロックチェーンのプラットフォームを構築しました。これは、Azure ファーストのサーバーレス コンポーネントを使用して Azure 上にクラウド スケールで構築された、クラス最高のフルスタック アプリケーションです。詳しくは、フルスタック ブロックチェーン アプリケーションのための Azure アーキテクチャ コンポーネント をご覧ください。

「アクセンチュアはサプライチェーンの変革を構想しています。それは、孤立したデータの島々という状態から、ブロックチェーンを活用した高度でセキュアなデータ ネットワークへの変革です。アクセンチュアはマイクロソフトの戦略サービス パートナーとして、すべての参加者にとっての価値を解き放ち、より多くのコンポーネント、エコシステムの参加者、ユース ケースを通じてネットワークをスケールさせる機会が生まれることに大きな期待を寄せています。」—David Treat, Senior Managing Director, Tech Incubation, Accenture

期待される結果は、元の生産場所、輸送、保管、最終的な目的地であるデータセンターのそれぞれにおける在庫追跡の大きな向上です。このソリューションはネットワーク参加者に、シリアライズされた品目のデジタル化をもたらします。また、関連する資金と情報の流れが、デジタル化された作業記述書 (SOW)、請求書、発注書 (PO) という形で実現されます。これは、トークン化された決済、リスク軽減、クレジット コストの削減など、従来型のシステムを超えるデジタル変革機能の基盤となります。支払いと決済の変革を通じてキャッシュフローが向上し、小規模なサプライヤーにとって金融手数料が軽減されることにより、持続可能性と回復力の高いサプライヤー ベースが構築されます。
マイクロソフトはコラボレーションに重点を置き、すべての企業がアクティブに参加できるエコシステムを形成しました。またマイクロソフトは、このコンソーシアムを設立し、最初のサプライ チェーン資材トレーサビリティ アプリケーションを開発し、すべての参加者にとっての価値を生み出すための投資を行うことによって、プロジェクトの種をまきました。

 

フルスタック ブロックチェーン サプライチェーン アーキテクチャ

 

さらに詳しく知る

私たちは、主要なサプライヤーやテクノロジ パートナーとコラボレーションして次の段階の取り組みに乗り出すことに大きな情熱を持っています。サプライチェーンにおけるブロックチェーンの詳細については、2020 年 12 月 3 日にメンフィス大学 FedEx テクノロジ研究所のブロックチェーン シリーズで行った私の基調講演 (英語) をご覧ください。

グラフィカル ユーザー インターフェイス、Web サイト

 

サプライ チェーンの大きな進歩と幸福で健全なコンソーシアム

Chuck Graham, General Manager of Microsoft Cloud Sourcing and Supply Chain は次のように述べています。「これは、業界の最大の課題に対応するために適用される、最も有望なイノベーションの 1 つです。すべての参加者が参照し、貢献し、監視できる、単一の共有されたデータ セットが存在するということは、すべての参加者がデータに信頼を寄せることができるという点で革新的です。このブロックチェーン プラットフォームはこれらの機能をすでに提供しており、品目を共有データ構造でデジタル化することによって、すでに数千万ドルの隠れたコストを削減し、エンドツーエンドの品目レベルのトレーサビリティを向上させ、サイクル時間を短縮し、利益を拡大しています。」

 

グラフィカル ユーザー インターフェイス、テキスト

私たちは、マイクロソフトだけでなく、より幅広い関係者間でこれらのメリットが実現されることをうれしく思います。

Lenovo

「Lenovo では、単に機能するサプライ ネットワークを、顧客から信頼される需要主導型のバリュー エコシステムに変革している最中です。ブロックチェーンの活用を通じて、運営効率、透明性、トレーサビリティが向上しており、真にセキュアで信頼されるサプライ チェーンが構築されようとしています。当社は優先パートナーとしてマイクロソフトとコラボレーションできることをうれしく思います。この作業は、Lenovo が構築する機能をさらに高め、Lenovo の変革戦略を向上させることになります。また当社は、運用とカスタマー エクスペリエンスの両方の観点で、当社の他のブロックチェーンの取り組みと同様のメリットが得られることについてもうれしく思います。」—Renee Ure, Lenovo’s Chief Operating Officer, Vice President Data Center Group

Wiwynn

「当社のようなマイクロソフトの主要な設計パートナーであり、クラウド ハードウェアのシステム インテグレーターである企業にとって、エコシステムのパートナーと頻繁にコミュニケーションを行うことは、製造、納品、アフター サービスの管理を行う上で非常に重要です。先進的なブロックチェーン テクノロジを活用して点を結びつけデータ ネットワークを構築するというマイクロソフトの取り組みに参加できるのは、当社にとって喜ばしいことです。状況を一変させ、透明性と信頼性をもたらすこのプラットフォームは、品目レベルのトレーサビリティを実現し、プロアクティブで動的なサプライ チェーン管理を可能にし、エコシステム全体にメリットをもたらします。」—Joe Chiao, Wiwynn’s Vice President of Sales and Account Management

ZT Systems

「マイクロソフトのブロックチェーンを活用したプラットフォームは、かつてないネットワーク レベルの可視性と、資材のエンドツーエンドの流れに対する検証可能性をもたらし、サプライ チェーン管理にとってゲーム チェンジャーとなります。このサービスの今後の応用によって、「製造時」のサブライ チェーンのセキュリティ検証、およびバリュー チェーン全体を通じたコンポーネント レベルの追跡とトレースが向上し、簡素化されます。ZT Systems は、主要な戦略的パートナーとしてマイクロソフトのブロックチェーン ソリューションを実現し、ZT の運営においてもメリットをもたらすことができることをうれしく思います。」—Ike Harris, Vice President of ZT Systems’ Supply Chain Operations

Arrow

「これは、複雑なグローバル サプライ チェーンのニーズを解決するという Arrow Electronics の歴史と専門性を示す事例です。当社は、世界最大規模の OEM が、そのすべての EMS パートナーが入手する原材料やコンポーネントを世界的に管理できるよう支援しています。これにより OEM は可視性を得ることができ、さらに重要な点としてサプライ チェーンの統制を得ることができます。これらは、現在でも多くの企業が実現しようと苦闘していることです。Arrow のグローバル サプライ チェーン サービスはこうした課題を解決することができ、これによって当社は市場の中で独自のポジションを築いています。」—Alan Bird, President of Arrow’s Global Supply Chain Services

Micron

「Micron では、新しいテクノロジ ソリューションを適用してお客様のニーズを解決することに情熱を燃やしています。当社とマイクロソフトのパートナーシップは、ブロックチェーン活用に秘められた大きな可能性を物語っています。それは、拡大されたサプライ チェーンと製品のエコシステム全体を通じて新しい効率と統制を提供できるという可能性です。」—Anand Bahl, Micron’s Chief Information Officer and Corporate Vice President

Splunk

「サプライ チェーンは産業化時代のまま停滞している一方で、情報は商品と同じ速さで移動しています。マイクロソフトのクラウド サプライ チェーンはデータ時代に対応していて、取引、アプリケーション、インフラストラクチャに対する完全な可視性が得られます。Splunk は、マイクロソフトと緊密に連携し、データを活用して優れた効率、透明性、信頼性を提供することを楽しみにしています。」—Nate McKervey, Head of Blockchain and DLT at Splunk

ConsenSys

「このパートナーシップは ConsenSys Quorum の Enterprise Ethereum の上に構築されており、業界標準に準拠しながら、取引情報、取引履歴、取引ステートメントの相互交換を実現するための次世代ソリューションを提供します。私たちは、マイクロソフトやアクセンチュアとコラボレーションし、原材料のポイントからサプライ チェーンの最終点までの商品の流れに対する透明性を提供できることにわくわくしています。」—Joseph Lubin, CEO and founder of ConsenSys