HoloLens を装着して MR でマニュアルを確認する男性

2022 年 5 月 23 日 (月)、24 日 (火) の 2 日間にわたり、東洋経済新報社主催、日本マイクロソフト協賛のオンライン フォーラム「製造業 DX フォーラム 2022〜今と、これから、できること〜」が開催されました。視聴による参加者は事前の予想を大きく超え、製造業における DX への関心の高さが浮き彫りとなりました。本稿では当フォーラムの 24 日 (DAY2) に行われたセッションの視聴レポートをお届けします。(DAY1 のレポートはこちら)
一部を除きオンデマンド配信されていますので、記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひそちらをご視聴ください。

製造業 DX フォーラム 2022〜今と、これから、できること〜

登壇企業

DAY1: 5 月 23 日 (月)
株式会社 神戸製鋼所
UDトラックス株式会社
旭化成株式会社
SBテクノロジー株式会社
日本マイクロソフト株式会社

※DAY1 のレポートはこちら

DAY2: 5 月 24 日 (火)
トヨタ自動車株式会社
株式会社リコーRGC
パナソニックAP空調・設備機器株式会社
コマツ産機株式会社
株式会社電通国際情報サービス
Microsoft Corporation

製造業を取り巻くデジタル化の課題とは

2021 年版ものづくり白書によると、日本の製造業は国内 GDP の約 20% を占める基幹産業にも関わらず、売上高・営業利益ともに直近 3 年間で減少傾向にあり、先行きが不透明な状況が危惧されています。

白書では、この状況をもたらした要因の 1 つとして「デジタル化対応への遅れ」が指摘されています。今回のフォーラムでは「製造業に特化した、現場最前線で取り組む DX 事例」を 2 日間にわたってご紹介。セッションには「現場からの発信力」「現場作業支援」「データ利活用」の 3 つのテーマが設けられ、登壇各社がどのようなことに課題を感じ、改革に取り組んでいるのかがよくわかる内容となっています。本稿を読んで興味をお持ちの方は、ぜひリンク先のオンデマンド配信をご覧ください。

DAY2 セッション紹介

【トヨタ自動車株式会社】

トヨタ自動車のセッションでは「市民開発者と技術コミュニティによる社内デジタル変革推進」と題して、トヨタ自動車社内におけるノーコード・ローコードツールを活用したデジタル変革推進活動を市民開発者と技術コミュニティによるボトムアップで推進している事例が紹介されました。

世界のトップ企業と肩を並べるレベルのデジタル化を目指す同社では、後回しになりがちな各部中小規模の業務アプリ開発を情報システム部門に頼らずに実行できる、市民開発者の育成施策に注力しています。

同社ではまず、習得が比較的容易で、既存ライセンスだけで開発環境をスピーディに利用可能な Microsoft Power Platform を開発ツールに採用。現在は 4,000 名を超える市民開発者が Microsoft Power Platform によるアプリ開発に取り組んでいます。さらに、市民開発者が部署を超えてつながり、自律的な問題解決や情報交換ができる社内技術コミュニティを設立。集合知を得られる場として賑わっています。こうした「市民開発者が楽しくアプリ開発に取り組める環境構築」が、ボトムアップでのデジタル化推進につながっています。

※オンデマンド配信はありません。
参考記事: ボトムアップで始めた小さな活動が全社的な取り組みに――Power Platform で市民開発を推進するトヨタ自動車

【株式会社リコーRGC/「工場のホウ・レン・ソウは今日から変わる!〜Teams コラボレーティブアプリを活用した、製品出荷判定業務の DX 化」】

リコーの子会社であるリコーインダストリー東北事業所では、生産部門での保証に加えて品質保証部門独自の保証プロセスがあり、出荷検査で発見された不具合の調査や判断は、出荷までの限られた範囲で行う必要があります。ですが、工場の建屋が分割されているため状況の把握が難しい上に、情報の伝達は電話やメールが中心。リモートワークの普及などニューノーマル時代の新たな課題も抱えていました。

伝達手段・対応方法概要

そこで、Microsoft Teams を活用したコミュニケーション プラットフォームの構築に取り組むことに。検査員が不具合をスマートフォンで撮影、情報を入力して、班長に Teams のチャンネルを通じて連絡、班長は報告を元に必要と判断すれば Teams で技術部門へ依頼し、原因の調査が行われるフローを構築しました。

Teams を使うことで情報共有や意思表示がスムーズに行われ、不具合発見から出荷判定までの流れの停滞が減ったそうです。また単に業務が効率化されただけではなく、コミュニケーションの流れと判定結果がラベリングされた状態のデータが蓄積されることで、将来的な RPA ツールとしての活用などの可能性も大きく広がっています。

オンデマンド配信
【テーマ: 現場発信で始める DX】株式会社リコーRGC
「工場のホウ・レン・ソウは今日から変わる!〜Teams コラボレーティブアプリを活用した、製品出荷判定業務の DX 化」

【パナソニックAP空調・冷設機器株式会社/「【パナソニックが取り組むモノづくりのデジタル化】Mixed Reality を活用した作業品質の向上について」】

パナソニックグループの一員として業務用空調機器および食品関連機器の製造等を担うパナソニックAP空調・冷設機器では、「スマート ファクトリー」への変革の一環として、モノづくりのデジタル化に取り組んでいます。今回のセッションでは、Mixed Reality を活用した作業品質の向上についてご紹介いただきました。

同社の工場では、「内製化に伴う部品の種類の増加」「作業員不足と新人作業員の増加」「外国人作業員の増加」「紙マニュアルの難しさ」「訓練する社員の負担増」といった要因から製品の不良率が増加傾向にありました。そこで、Microsoft HoloLens 2 と Dynamics 365 Guides を活用した自動溶接機の 3D マニュアル制作に取り組むことに。

3D マニュアル作成の流れ

セッション内では 3D マニュアルの作業手順のデモンストレーションも実施されました。動画やテキストなどの素材を Dynamics 365 Guides の PC アプリに取り込んで手順を作成する様子や、作成した手順の現場への 3D 配置を HoloLens 2 を装着して直感的に行う様子がよくわかります。

結果として、3D マニュアルの配置による不良率の低減に成功しただけでなく、作業指導者の負担軽減、社員のコンテンツ作成スキル獲得、紙マニュアルの削減などの成果も得られたそうです。

オンデマンド配信
【テーマ: 現場作業支援事例】パナソニックAP空調・冷設機器株式会社
「【パナソニックが取り組むモノづくりのデジタル化】Mixed Realityを活用した作業品質の向上について」

【コマツ産機株式会社/「Azure Machine Learning を活用した生産設備の予知保全」】

プレス機械や板金機械を製造するコマツ産機が、Azure Machine Learning を使って実現を目指したのは、機械の故障しそうな部品を AI が予測し、故障によって機械が動かなくなる前に部品交換依頼を通知するシステムでした。

プレスが稼働を停止すると、下流工程は全て停止してしまいます。ですから機械の保全は慎重に行う必要があります。これまでは機械が壊れてから交換する事後保全ではなく、壊れる前に交換する予防保全が主な保全対策でした。ですが、頻繁に行われる点検や、まだ使える状態なのに交換せざるを得なくなるといったコストの問題がありました。

予知保全とその目的

そこで Azure Machine Learning によって機械の波形データを学習、解析する予知保全システムを構築することに。AI モデルの開発には Azure Machine Learning に実装されている Designer という機能を活用しています。モジュールを線で結ぶことで全体の処理フローを記述・実行できるため、人工知能の専門知識がなくても開発を円滑に進められたとのこと。

このシステム構築により、ユーザーは Microsoft Power BI によって可視化されたインターフェイス上で劣化部位や劣化状態を判断できるため、保全計画の効率化と交換部品の最適化が可能になりました。

オンデマンド配信
【テーマ: 製造現場のデータ活用】コマツ産機株式会社
「Azure Machine Learningを活用した生産設備の予知保全」

関連記事: 「Azure Machine Learningを産機Komtraxと組み合わせ「予知保全システム」を構築、保全業務の効率化と部品交換の最適化が可能に」

【株式会社電通国際情報サービス/「明日からはじめる製造業の DX〜DX 推進への 3 つの鍵 <クラウド、ローコード、AI>〜」】

DAY2 のパートナー ソリューションは、製造業を始めとする幅広い分野で IT ソリューションを提供している電通国際情報サービス (ISID) の武田嵩史氏が登壇。「明日からはじめる製造業の DX〜DX 推進への 3 つの鍵 <クラウド、ローコード、AI>〜」と題して、日本企業における DX 推進の現状と課題についての説明と、これからの DX 推進に必要とされる 3 つの技術「クラウド」「ローコード」「AI」に関して同社が提供するソリューションの解説が行われました。

まず始めに武田氏は DX の定義について解説。「単なる既存システムのリプレースではなく、進化したデジタル技術を活用し、柔軟性を持つプラットフォーム上で組織全体でデータを利活用し、ビジネス変革を実現することこそが DX」と語ります。その上で日本企業の DX 推進について触れ、現在ほとんどの企業で DX 推進が手つかずの状態であり、今後 DX 推進が進まなければ、爆発的に増えるデータを活用しきれずにデジタル競争の敗者となってしまう、と警鐘を鳴らします。

DX 推進の現状

武田氏は、企業の DX 推進を阻害する要因として「必要なデータが複数のシステムに散在しており、領域を跨いでデータを活用できない」「企業のどこにどんな情報があるか全体像を把握できない」というふたつの課題を挙げます。この課題を解決するために同社では、「システム連携」と「データ集約」の 2 つのアプローチを採用しており、製造 DX においては後者のアプローチが適しています、と武田氏。個別のシステムを連携し、そこから集約したデータを一元化、分析結果を人やシステムにフィードバックするサイクルを形成することが重要であり、そのサイクルを実現するために必要なのが「クラウド」「ローコード」「AI」の 3 つの技術である、と話を続けます。

製造 DX を実現するソリューション (1/2)

ここから武田氏は、クラウド、ローコード、AI のそれぞれの分野における同社のソリューションを紹介していきます。

まず「クラウド」分野では、データ分析基盤に必要なさまざまな機能を集約した Azure Synapse Analytics と、データガバナンスを実現するためのデータ管理ソリューションである Azure Purview を紹介。武田氏は、実際の操作画面を操作しながらわかりやすく機能を説明していきます。

続いて「ローコード」分野では、最小限のコーディングにより迅速な開発が可能で、システム連携や機能拡張も容易であるとして、マイクロソフトのローコード開発プラットフォームである Power Platform を紹介。アプリ開発ツール Power Apps で作られた故障診断アプリと、データ可視化ツール Power BI によるデータ可視化のデモンストレーションが行われました。

そして「AI」分野では、AI 製品企画・開発から AI サービスのサポート、AI 人材育成といった同社の AI 関連サービスの活用事例を紹介。最後に同社と日本マイクロソフトがコラボレーションした MVP (Minimum Viable Product) というパッケージ サービスを紹介して、セッションは終了となりました。

MVP (Minimum Viable Product) のご提供

データ利活用が死活問題となり得るこれからの社会。企業が生き残るための DX 推進の方向性と必要とされる技術がわかりやすく理解できるセッションでした。

オンデマンド配信
【パートナーソリューション】株式会社電通国際情報サービス
「明日からはじめる製造業の DX〜DX 推進への 3 つの鍵 <クラウド、ローコード、AI>〜」

【Microsoft Corporation/「製造業 DX のための IoT/OT セキュリティ戦略〜プロアクティブな対策による合理的なリスク低減を」】

2 日間を締め括るジェネラル セッションは、Microsoft Corporation のセキュリティアドバイザーである花村実が登壇。DX を推進するうえで避けて通れないセキュリティ戦略について解説しました。

まずは現代のサイバー犯罪について。近年、サイバー犯罪は市場化、組織化されており、その気になれば誰でも犯罪を依頼できる状況です。そんななかで主流となっているのがランサムウェアと呼ばれる攻撃です。エンドポイントにマルウェアを感染させ、横移動を繰り返して特権アカウントを侵害、全社的に暗号化をかけ、身代金を要求するのがランサムウェアの一連の流れです。

サイバー犯罪の経済活動

これまでのような、攻撃があるたびに対応する受身のセキュリティ対策では、ランサムウェアに対しては効果的とは言えません、と花村。ファイアウォールで守られていても安心とは言えず、侵害は起こり得ます。被害を抑えるためには、まず全体を包括的にモニタリングできることが重要。製造業で言えば工場も含めて ITとOT を包括してモニタリングしていかなければなりません。

そこで花村は、マイクロソフトの SIEM エンジン Microsoft Sentinel を紹介します。Microsoft Sentinel は IT、IoT、OT を包括的にモニタリングし、時系列で異常を感知。侵害された箇所もひと目で分かるので、重大なインシデントに至る前に的確に対応することができます。

IT、IoT、OT の包括的な管理 - Microsoft Sentinel

サイバー セキュリティにおいては、実は当たり前のことを当たり前に行うことが最も重要、と花村。多要素認証の適用、最小権限ポリシーの採用、最新環境の維持、アンチマルウェアソリューションの利用、データ管理といった対策で 98% の攻撃から防御できるのだそうです。花村はマイクロソフトは日々進化するソリューションで、効果的かつ効率的なセキュリティ対策を支援していくことを示して、セッションを終えました。

オンデマンド配信
【ジェネラル セッション】Microsoft Corporation
「製造業 DX のための IoT/OT セキュリティ戦略〜プロアクティブな対策による合理的なリスク低減を」