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業界

部門間の密接な連携をサポートして、新たな視点で運輸業におけるビジネス アイデアを共創します – デジタル アドバイザリ サービス

第 5 回 デジタル アドバイザリ サービス本部 チーフデジタルアドバイザー 土屋 泰之

今日の運輸業は、様々な課題に直面すると同時に業界自体のデジタル トランスフォーメーションの大きな波を受け、今までにない変革が求められています。専門化した部門間の密接な連携や、車両、航空機などのメンテナンスにかかわるノウハウの円滑な継承、そして激変する市場環境に追随し得る新たなサービスの提供やビジネス モデルの創出などはその一例です。そうした取り組みに向け、有効なアプローチとなるのがデジタル トランスフォーメーションの推進です。

マイクロソフトの「デジタル アドバイザリ サービス」では、新しいビジネス アイデアとデジタル技術を活用し、運輸業のお客様のビジネスの可能性を最大化すべく様々な支援に注力しています。

日本マイクロソフト株式会社
エンタープライズ & パートナー サービス統括本部
デジタル アドバイザリ サービス本部
チーフデジタルアドバイザー
土屋 泰之


プロフィール
日系の通信機器ベンダーに入社したのち、外資系通信機器ベンダーに転職。両社ではプリセールス エンジニアとして顧客の IT 活用や新規ソリューションの導入を担当。その後、サーバー機器を扱う外資系コンピュータベンダーに在籍後、スマート デバイスや PC を提供する外資系メーカーにおいて、同メーカーの提供するポートフォリオを活用した働き方改革などを提案するコンサルテーションおよびテクニカル サポートに従事したのち、日本マイクロソフトに入社。

現在は、クラウド サービスをはじめネットワークやコンピューティング、モバイルといった、CX 向上では重要な要素となる技術領域を網羅する、そのバランスのとれた知見に基づき、運輸業を中心とする顧客のデジタル トランスフォーメーションの推進に取り組んでいる。

■今、まさに運輸業が直面している 3 つの課題とは

旅客や貨物の輸送を担うことで、我々の生活やビジネス活動を支えている運輸業界。運輸業界のお客様が直面している大きな課題は、主に 3 つあげられます。

1 つめが、社内の各部門間におけるコミュニケーションの円滑化、および連携の強化です。一般に運輸業のお客様の組織は、社内の各部門が非常に高度な専門性を持った集団で構成されています。例えば、航空業界でいうなら航空機の運用に携わる部門。空港や機内、そのほかオンラインで顧客に直接サービスを提供する部門や、荷物をハンドリングする地上職員、機材のメンテナンスを担当する整備部門などがあげられます。

鉄道業界においても同様で、運転手や車掌もいれば、車両を整備する人、運行計画を立てる人、もちろん駅務に携わる人員もいますし、そのほか電力送電や駅ビル商業施設に関する業務まで視野を広げて捉える必要があります。そしてこれら各部門の職種では、そこで必要とされる専門性が異なるため、ある部門がほかの部門の業務を代替することはできません。そうしたことから、各部門では顧客や荷物の輸送にかかわる安全性、定時性といった最終的なミッションを共有していながら、横のつながりの連携においてまだまだ改善の余地があるといえるのが実情です。

2 つめは車両、航空機などの運用やメンテナンスおよび顧客サービスにかかわるノウハウの継承です。この問題は、製造業をはじめほかの業界においても最近は切実な課題として浮上しています。特に機材運用やメンテナンス ノウハウの継承に関しては、就労人口の減少という社会的な課題を背景としながら、ベテラン従業員が相次いで退職していく中、これまで社内で脈々と培われてきた技術的な知見やノウハウが、次世代を担う層にうまく引き継がれていないという状況が指摘されています。

そして 3 つめは、新しいビジネスの創出にかかわる部分です。運輸業では、主に人を定刻通りに、安全に「運ぶ」というのがコア ビジネスとなります。しかし昨今では、技術の進展を背景に、必ずしも人が移動しなくとも目的を達成できるケースも増えています。海外や地方へ出張していたビジネス パーソンが、新たなコミュニケーション ツールを駆使して、現地との間で必要なやり取りを行うといったことはその一例です。こうした状況の変化は、運輸業にしてみればコア ビジネスが縮小していくことを意味するため、これまで培ってきたノウハウに斬新なアイデアを取り込み、今までにない新たな価値やサービスをいかに創出していくかが求められてきます。

■2 つのアプローチで将来に向けたあるべき姿を描く

マイクロソフトのデジタル アドバイザリ サービスでは、こうした運輸業が抱えるチャレンジに向けて有効な手段となるデジタル トランスフォーメーション推進の支援を行っています。その基本的なアプローチのひとつが、日頃なかなか業務では顔を合わせることのない、お客様企業内の様々な部門の方々に一堂に会してもらう形でのワークショップの実施。そこで各部門の現場が抱える様々なペイン ポイントを互いに出し合ったのち、その課題解消に向けた To-Be モデル (あるべき姿) をお客様とマイクロソフトが一体となってエンビジョニングしていきます。

その際、我々が用いる手法が、「Re-Imagine」と「If-Imagine」という 2 つのアプローチ。前者がお客様の業務における具体的なオペレーションが抱える課題の解消に軸を置いたものであるのに対し、後者はお客様が「こんなことができたらいいな」というように、漠然と思い描いているイメージの抽出とその理解、あるいはお客様がまだ気づいていないアイデアを顕在化させる手法となります。

さらに、Re-Imagine や If-Imagine により導き出された To-Be 像を具現化していくためのシナリオ、ストーリーを明確化していく中では、CX (カスタマー エクスペリエンス) の向上を目的としたデザイン思考を積極的に駆使していきます。例えば、特定のセグメントに属する顧客や、社内の特定職種の従業員をモデルにペルソナを事前定義し、カスタマー ジャーニーやエンプロイー ジャーニーを描いていくといった手法はその 1 つです。

そうした際に、デジタル アドバイザリ サービスの大きな強みとなるのが、運輸業をはじめ各事業領域に関する高度な知見を持った約 400 人のデジタル アドバイザーをグローバルに擁している点です。国内のデジタル アドバイザーが海外のメンバーと密接にコラボレーションしながら、国外の事例をお客様に紹介。それらをヒントにワークショップを展開したりします。そこには、世の中にまだ紹介されていないような最新の事例や取り組みなども含まれ、きっとお客様の新しいビジネスに向けたヒントが見つかるはずです。

■ユニークなアイデアの数々が生み出されるワークショップ

あるお客様とのケースでは「カスタマイズ サービス」という面白いアイデアが出てきました。例えば航空機の旅における搭乗クラスには、意外に選択肢が少ないという事実があります。具体的にはファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミー クラスといったバリエーション、列車でいえばグリーン車が用意されているのみで、利用者に提供されるサービスもそれらクラスごとにほぼ一律です。「そうした一律のサービスではなく移動時間の前後も含め、顧客のより細かなニーズに応じた新たなサービスの提供を目指してはどうか」というのが、このカスタマイズ サービスのアイデアの骨子です。

例えば、健康状態に不安のある高齢者に対し、専用の搭乗スペースを用意し、ドクターが一緒に添乗。 機内で常に体の状態をチェックするといったことはその 1 つです。あるいは利用者の求めに応じて、メニューには設定されていない飲み物を用意する、搭乗中に視聴できる映画タイトルのリクエストを前もって受け付けるなど、様々なカスタマイズが考えられます。当然、利用者には相応のコスト負担が求められますが、そうしたカスタムな体験に対価を払ってもいいと考える利用者は多いはずです。

そのほか、ある鉄道会社向けワークショップでは、駅構内に展開された商業スペース、いわゆる「駅ナカ」のさらなる進展についても議論されました。それは複合現実 (Mixed Reality) などを活用しながら、買い物体験の向上だけではなく、エンターテイメント性なども含め、駅施設利用者の CX 向上を図っていこうというアイデアです。

現在までに活動してきたお客様向けの取り組みでは、こうしたユニークな新ビジネス創出に向けたアイデアの例は枚挙にいとまがありません。そうした中で、私自身も新たな発見に大いに刺激を受け、自らの仕事にやりがいを感じています。デジタル技術活用による課題の解消や新しいビジネスの創出を検討されているなら、自身の経験やグローバルな知見をもとに、アイデアを創出しそれを具現化していく支援をさせていただきます。

関連リンク

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