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業界

IoT で変えるものづくり (パート 2): データにもっと働いてもらう

Cables in a data management location

※本ブログは、米国時間 2019 年 4 月 15 日に公開された ”Transform manufacturing with IoT part 2: putting data to work in manufacturing” の抄訳 (しょうやく) です。

データは、製造業で IoT が持つ価値の基盤となるものです。データは、オペレーションに可視性をもたらすことで、状況監視のための豊富なモデルを構築し、総合設備効率 (OEE) を向上させ、コネクテッド製品によって新たな収入源を生み出すことを可能にします。

メーカーはこれまで数十年にわたり、データを有効に活用して、生産の監視、最適化、および制御をしてきました。しかし、現在活用できるようになったデータの量と多様性、そしてデータが与える影響の大きさが新たに考慮すべき要因となっています。2020 年までには、スピード、俊敏性、効率性、およびイノベーションを向上させるために、メーカーの 8 割で、データを中心に据えた大規模な業務改革が必要となる見込みです。

この変革は生産ラインだけでなく、従業員の業務内容にも変化をもたらします。Forbes とマイクロソフトが実施した調査では、2021 年までに、41% の企業が最前線で働く従業員にウェアラブル デバイスを装着させ、40% の企業がそれらの従業員に RFID デバイスを配布するようになることが明らかになっています。このようなソリューションを採用することで、従業員は、状況に応じたアドバイスを入手し、パフォーマンスを最適化する方法について理解し、機器のある場所を把握することが可能になります。自動化を進めるには、スキルアップのトレーニングを実施して、従業員が “機器を運用する機器” を自由に使いこなせるようにする必要があります。管理レベルでは、製造の種類を問わず、データについて理解し、その取り扱いができることが、基本的なスキルになっていきます。

時間や資金を節約し、さまざまな問題を事前に回避するためにも、この素早い変化、”ラピッド ライド” で直面する可能性の高い主要な課題についてしっかりと考えておいて損はありません。これらの課題は、ビッグ データの “3 つの V” (量、速度、および種類) にまとめることができます。

量 (Volume): データの洪水を抑える

接続する生産プロセスおよびサプライ チェーン プロセスの要素が増えるについて、取得するデータの量も増えていきます。さらに将来の分析を見込み、一部のデータをより長い期間保存することが必要となる場合もあります。クラウド ベースのシステムを採用することで、ビッグ データの保管コストやその複雑さを大幅に軽減できます。それほど頻繁にアクセスしないデータについては低コストの “コールド ストレージ” アーカイブを使用し、アクセス頻度が上がる “ウォーム” データや “ホット” データについてはよりパフォーマンスの高いシステムを使用する階層型ストレージ モデルを利用することで、大幅なコスト削減を実現できます。

世界有数の建機メーカーであるコマツは、同社のスマート コンストラクション ソリューションによって収集された大量のデータを、クラウドを活用して処理することで成功を収めています。コマツは、同社のスマート コンストラクション クラウド サービスにより莫大な量のデータを保存することになると理解していました。また同社のこのサービスは、さまざまな建設企業 (そのうち 90% が小規模企業) によって利用される予定でした。コマツは、顧客がインフラストラクチャを展開する必要性をなくすことで、コストを抑え、より多くの場所にスマート コンストラクション ソリューションを導入することができました。

速度 (Velocity): リアルタイムのデータ

ベロシティーとは、情報システムにデータが取り込まれる速さのことです。時系列データ (一定の間隔で収集され、タイムスタンプが押されるデータ ポイント) では、比較的短い時間で数十億件のイベントが収集されることもあります。システムがこのデータを取り込んで分析する速度が速い程、より迅速に有用な情報に基づいた行動ができるようになります。Azure Time Series Insights など、小さい規模から開始し、容易に拡張できるソリューションを選択することで、長期間にわたってメリットを享受できるようになります。

食品飲料業界で世界最大のメーカーの 1 社である Anheuser-Busch InBev は、ストリーミング分析プラットフォームを利用して、従来にない精度で在庫を追跡しています。同社のグローバル ディレクターである Chetan Kundavaram 氏は次のように述べています。「これにより、まさにミクロレベルのデータが提供され、すべてのパレットおよびケースを識別し、醸造された場所、卸売業者の元に到着した時、および顧客に購入されて店外に持ち出されるまでの過程について把握できるようになっています。私たちは Microsoft Azure IoT サービスを利用して、リアルタイム データを収集および処理しています。そしてデータを自社のグローバル分析プラットフォームに取り込むことで、世界中の在庫の動きを正確に追跡することが可能になっています。」これは、単にリアルタイム データを取り込むスマート アプリケーションというだけでなく、企業が生産ラインにとどまらず、製造バリュー チェーン (このケースでは、インテリジェント サプライ チェーン) 全体を通して効率性を実現する方法の一例でもあります。

種類 (Variety): データの多様性を活かす

3 つ目のデータの課題は種類です。早い段階で、皆さんは 1 つまたは少数のソースから得た IoT データを処理しているかもしれません。しかし、バリュー チェーンに沿って IoT 機能を拡張する中で、データの種類が急増することがあると気付きます。データを標準化することはデータの一段の有効活用につながり、その結果としてより信頼性の高い、実用的な成果を実現できます。

たとえば、主要な IoT イノベーターである Rolls-Royce は、同社のサービスとしてのエンジン ソリューションにさまざまな種類のデータを取り込んでいます。その一例として、飛行中に航空機から無線で送信されるエンジン性能のスナップショット、”ブラック ボックス” データの大量ダウンロード、技術的なログ、フライト計画、サード パーティから提供される天候データが挙げられます。Rolls-Royce は、分析ワークフローでこれらの情報をすべて利用できるようにすることで、顧客のためにエンジンの状態を監視し、メンテナンスの必要性を予測して、燃料の利用を最適化することが可能になっています。

活用できる可能性があるさまざまな種類のデータに幅広く目を向けることが、新しいソリューションにつながることもあります。産業用制御システム、ビジネス アプリケーション、センサー、ウェアラブル、GPS デバイス、オーディオ/ビデオ収集デバイス、CRM、ERP、さらにはソーシャル メディアのデータがソリューションの価値をどのように高めるか考え、IoT のライフサイクル全体を通して幅広い種類のデータを処理できる柔軟なプラットフォームを選択しましょう。

3 つの V は、IoT 製造プロジェクトによく見られる課題の一部を示すものです。これらの複雑さを軽減させるにはどうすればよいでしょうか。

オープン標準の採用

オープン標準を採用することで、IoT の価値を無力化するデータのサイロ化を防ぐことができます。これらの標準は、接続性、相互運用性、セキュリティ、および信頼性を簡素化します。マイクロソフトが、OPC UA などのオープン データ標準を強力にサポートする理由がここにあります。これは、未来の工場を構築するうえで欠かせないもので、実際にマイクロソフトは、OPC UA のコードベースに最も貢献しています。マイクロソフトは SAP や Adobe と協力して、あなたが持つあらゆるシステムとあらゆる基幹業務から集められたあなたのデータについて、そのすべてを包括的に見ることのできるビューを提供するために、Open Data Initiative (ODI) を策定しました。また、BMW などのパートナーと協力して、オープン テクノロジ フレームワークおよび業界横断型コミュニティを構築しています。これは、Open Manufacturing Platform として知られています。プロセス型製造業やディスクリート型製造業で IoT のイノベーションを実現するうえで、固有のデータ形式に捕らわれる必要はもうありません。

脅威からのデータ保護

データへの依存が高まれば、デジタル セキュリティを強化する必要性も生じます。データへの攻撃は巧妙になり、デバイス、ネットワーク、クラウド サービスなど、ソリューションのあらゆるレベルで弱い部分を狙うようになります。ポイント ソリューションを利用してそれぞれの層を保護するやり方では、たちまちプロセスが煩雑化してしまうおそれがあります。メーカーは、エッジやクラウドのさまざまな場所にデータが存在する可能性を踏まえながら、エンド ツー エンドの保護機能を提供するテクノロジを採用する必要があります。これにより、一括管理でリスクの特定と軽減を行えるようになり、セキュリティ オペレーションを大幅に簡素化できます。

エッジのデータ

クラウドは、多くの製造シナリオにおいて IoT の価値を推進するビッグ データの保存や分析に欠かせないものです。しかし、必要な時にデータを処理し、そのときの行動の指針にすることができるハイブリッド モデルこそが、多くの場合において適切な選択肢であることが徐々に明らかになってきています。

IoT と機械学習を活用して、食品の安全性を高めつつ加工時の食品廃棄を減らしている食品加工機器サプライヤー Bühler の例を見てみましょう。同社の LumoVision システムは、1 時間あたり 15 トンの速さで穀物の汚染された個々の穀粒を識別して取り除きます。このシステムは、食品の廃棄とエネルギー消費を減らすと同時に、強力な発がん性物質 (アフラトキシン) の量を劇的に削減することにつながる可能性を秘めています。同社は、クラウド コンピューティングを活用して、このソリューションに必要となる強力なモデルを開発しました。そして、それらのモデルをエッジで展開し、リアルタイムの精密プロセスを実現しています。

エッジのデータ処理機能により、データに関する 3 つの V の課題の最小化、データ品質の最大化、そしてコスト削減を実現できます。多くの場合、後で分析するために保存する価値がある IoT データの量はほんのわずかに過ぎません。有意義なデータを分離しクラウドに送信するためのソリューションの 1 つとして、ローカルにインストールされ事前にトレーニングされたモデルが挙げられます。他のソリューションでは、Azure Stream Analytics があります。この製品を Azure IoT プラットフォームの他の製品と組み合わせることで、データを取り込んで処理し、視覚化して、データに基づいて行動するための完全なソリューションを実現できます。最後にAzure Time Series Insights は、エンド ツー エンドの IoT 分析のためのオプションを提供します。

データは、工場の現場だけでなく、製造業全体を変革するパワーを秘めています。次回は、これを全社にわたって適用することで、これまでにないレベルの価値を実現する方法についてお話したいと思います。
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