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業界

【オンデマンド配信リンクあり】パナソニックが取り組むモノづくりのデジタル化とは〜製造業 DX フォーラム 2022 視聴レポート

2022 年 5 月 23 日 (月)、24 日 (火) の 2 日間に渡り、東洋経済新報社主催、日本マイクロソフト協賛のオンラインフォーラム「製造業 DX フォーラム 2022〜今と、これから、できること〜」が開催されました。参加者数は事前の予想を大きく超え、製造業における DX への関心の高さが浮き彫りとなりました。

なかでも反響が大きかったのが、パナソニックAP空調・冷設機器株式会社による「【パナソニックが取り組むモノづくりのデジタル化】Mixed Realityを活用した作業品質の向上について」と題したセッションでした。本稿ではその模様をリポートします。

なお、本セッションはオンデマンド配信でもご覧いただけます。記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひご視聴ください。

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【テーマ: 現場作業支援事例】パナソニックAP空調・冷設機器株式会社

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【オンデマンド配信リンクあり】 製造業 DX フォーラム 2022〜今と、これから、できること〜DAY1 視聴レポート

【オンデマンド配信リンクあり】 製造業 DX フォーラム 2022〜今と、これから、できること〜DAY2 視聴レポート

【パナソニックが取り組むモノづくりのデジタル化】Mixed Reality を活用した作業品質の向上について

パナソニックAP空調・冷設機器株式会社 取締役副社長 空調機工場長 空調機生産技術部 部長 遠矢 大 氏、空調機生産技術部 生産技術課 生産技術係 島田 悠斗 氏

パナソニックAP空調・冷設機器株式会社
取締役副社長
空調機工場長 空調機生産技術部 部長
遠矢 大 氏

空調機生産技術部 生産技術課 生産技術係
島田 悠斗 氏

■スマートファクトリー実現に向けたデジタル化プロジェクト

パナソニックグループの一員として業務用空調機器および食品関連機器の製造等を担うパナソニックAP空調・冷設機器 (略称: PAPARS) では、「スマートファクトリー」への変革の一環として、モノづくりのデジタル化に取り組んでいます。今回のセッションでは、Mixed Reality (MR) を活用した作業品質の向上についてご紹介いただきました。

最初に遠矢氏が登壇し、PAPARS が目指している姿と、それを実現するための DX 施策について解説が行われました。遠矢氏曰く、B to B 事業を営むなかで最もこだわるべきポイントは「顧客との関連性マネジメント」であり、対応力、特に「品質と納期の信頼性の高さ」を魅せること。そのために PAPARS では、工場部門がマザー工場となって、企画部門、開発・設計部門、仕入れ先、販売、顧客サービスとつながり、さらに海外拠点ともつながる「スマートファクトリー」を目指しています。

遠谷氏は「スマートファクトリー実現のためには工場 DX が不可欠です」と述べ、”IoT やビッグデータ、AI を活用し、開製販がつながるモノづくりでお客様価値工場と QDC の飛躍的な向上を目指す”ことが同社のあるべき姿であることを示しました。

PAPARS のありたい姿 B2B に必要不可欠な「品質と納期の信頼性の高さ」を魅せる "スマートファクトリー"

PAPARS では、スマートファクトリーの実現に向けて、2020 年から 8 つの DX 推進プロジェクトに取り組んでいます。例えばその中の 1 つである「デジタル エンジニアリング プロジェクト」では、設計の CAD データを取り込み、VPS というシステムで作業の順番をシミュレーションすることにより、課題の抽出や作業の合理化を図っています。このデータは作業のポカヨケ (ミスの回避) や作業時間管理などにも役立てられ、生産性向上にもつながっています。

PAPARS 工場 DX
PAPARS 工場 DX 取り組みの例

■MR を活用した作業品質向上プロジェクト

こうした取り組みのひとつに、「MR を活用した作業品質の向上プロジェクト」があります。ここから話者は MR プロジェクトを担当している島田氏にバトンタッチ。PAPARS の抱える課題と、それを解消する MR 技術の活用について、デモを交えた解説が行われました。

群馬県邑楽郡大泉町にある PAPARS の工場では、内製化に取り組むなかで部品の種類も増加してしまうという課題があり、さらに従業員の高齢化や住民の 2 割が外国人という土地柄といった背景から、「作業員不足と新人作業員の増加」「外国人作業員の増加」「紙マニュアルの難しさ」「訓練する社員の負担増」などの課題も抱えています。そして近年は、これらに起因する製品の不良率が増加する傾向にありました。

取り組みの背景や課題

そこで島田氏を中心とするメンバーが取り組んだのが、Microsoft HoloLens 2 と Dynamics 365 Guides を活用した自動溶接機の 3D マニュアル制作でした。ロボットによる自動溶接を行うためには、ワークとジグを適切な向きで適切な箇所に設置する必要がありますが、形状の特徴が少なくて間違いが起きやすい状況でした。島田氏は、実際にDynamics 365 Guides のインターフェイスや HoloLens 2 の視野を通して見た実作業の様子などを動画で示しながら説明していきます。

対象作業 - 自動溶接機
利用ソリューション Microsoft HoloLens 2、Dynamics 365 Guides

■直感的な操作と現場で役立つ機能を体感できるデモンストレーション

3D マニュアルの制作手順は大きく分けて 3 つ。まずは素材を準備します。といっても、制作工程は、スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した取り付けの実作業の動画を Windows の標準アプリで編集するだけです。

素材の準備

続いて Dynamics 365 Guides の PC アプリで手順を作成します。テキストで作業内容やポイントなどを書き込んで、編集した動画や画面を取り込み、一緒に表示するための矢印などの素材を登録するのですが、1 つの画面に同時に表示できるため、操作はとてもスムーズに行えそうです。

PC アプリで手順を作成

最後に作業現場への 3D コンテンツを配置していきます。HoloLens 2 を装着した状態で、MR で示される素材を「手でつかんで置く」アクションや「指先からのレーザー ポインターによる指示」だけで直感的に操作しながら空間上に配置できます。サイズや色の変更、素材のコピーも可能なので、注意を促したい場所は矢印を大きく示したり、黄色と黒の警戒色に塗り替えたりといった微調整を加えるのも簡単です。

現場へ 3D コンテンツを配置
コンテンツの色を変更することも可能です

その後、一連の制作工程から作業工程までをまとめた動画では、作業担当者が配置された 3D マニュアルに従って実際に組立作業を行う姿が映し出されました。手順の動画を見ながら、空間に配置された矢印に合わせてパーツをはめ込む様子や、「次の手順へ」の声かけだけで音声認識により次の手順が示され、着々と工程が進む様子がよくわかります。

配置された MR 画面のマニュアルを確認しながら作業する男性
作業箇所を MR で指示

■目指す姿の実現に向けた的確なアクションが真のデジタル化を実現する

最後に島田氏は、3D マニュアルの導入によって期待される 3 つの効果を挙げました。1 つ目は「言語への依存を減らし理解度を向上、早期の習熟が可能」。日本語が母語でない外国人に日本語で説明しても完全に理解を得るのは難しいですが、実際に図形や画像を見ることで理解を効率的に深められます。2 つ目は「ポカヨケ、作業品質向上」。マニュアル忘れや不注意によるミスなどを解消でき、作業の品質を向上できます。3 つ目は「自習型コンテンツによる作業指導者の負担軽減」。HoloLens 2 を着けさえすれば 1 人で学べますし、教育担当の社員は空いた時間で別の作業を進められます。

島田氏はさらに、PowerPoint や Excel を扱えれば誰でも 3D コンテンツを制作できる操作の簡便さや、MR 空間内に警告オブジェクトを配置することで、作業中に安全への注意喚起が行える点、紙マニュアルの削減や教え方のバラツキを低減できる点もメリットとして示して、セッションは終了となりました。

期待される効果について

企業として、闇雲にデジタル化を推進するだけでなく、その目指す姿を示すこと、現場に近い従業員が中心となって、最適なツールを導入すること、課題の抽出と的確なプロジェクトの立案、結果分析の大切さがよく伝わるセッションとなりました。

本セッションはオンデマンド配信でもご覧いただけます。記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひご視聴ください。

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