デジタル トランスフォーメーションで活用される技術の中でも、大きな注目を集めているのが IoT(モノのインターネット)と AI(人工知能)だ。マイクロソフトでは、これらの技術の研究開発を強力に推進。ユーザーが潤沢な予算や特別なスキルセットを用意しなくても、すぐに利用できる環境を目指している。すでにこうした技術を利用して、デジタル トランスフォーメーションを実践した企業も多い。ここでは、そうしたいくつかの事例を紹介したい。

ビジネスですぐに使えるテンプレートを提供

最先端技術をいかに自社のビジネスに組み込み、競争優位性を確立するか。これは多くの企業にとって重要な課題だと言えるだろう。逆に言えば、どのようなテクノロジーを選択するかが、ビジネスの成否を左右する重要なカギを握っているといってもよい。

マイクロソフトでは、デジタル トランスフォーメーションの推進に向け、様々な技術を研究開発している。その大きな特長は最先端の技術であっても “すぐに使える” 点だ。

例えば IoT の領域では、よく使われるシナリオをすぐに実践できるように、あらかじめテンプレートを用意。具体的には「遠隔監視」「資産管理」「予兆保守」の 3 つのソリューションを提供している。

その理由を日本マイクロソフトの大谷 健は「IoT を実現する仕組みを構築するには、先進企業でさえも長い期間を必要としています。企画から始まって、実際に収益化するまでには 2 年ほどかかるのが実情です。お客様が最初の一歩を踏み出しやすくするためには、すぐに使えるソリューションが必要だと判断しました」と語る。

すでにこうしたソリューションを活用して変革を推進している企業も少なくない。世界有数のエレベーター メーカーである独ティッセンクルップや、世界中の航空会社にジェットエンジンを提供している英ロールスロイスなどのグローバル企業が、その一例だ。

ティッセンクルップは、エレベーターの保守サービスの生産性を向上させるために「Azure IoT Suite」というクラウド サービスを活用。エレベーターの稼働状況のデータをリアルタイムで収集・分析するシステムを構築し、世界中にある十数万台のエレベーターを監視する体制を築いている。

現在、同社はヘッド マウント型 PC「HoloLens」の導入も推進。修理に行く前、そして現場でエレベーターや修繕部品の 3 次元画像を見ることで、生産性を向上させている。

HoloLens の画面上には、過去の修繕履歴や修理の手順を表示できる。修理の途中で「Skype for Business」のビデオ会議で遠隔地にいる専門家と対話することも可能だ。

ロールスロイスも Azure IoT Suite を活用して、顧客企業が運用しているエンジンの稼働状況を収集するシステムを構築。エンジンと航空機に取り付けたセンサーから収集するデータを分析している。この分析結果に基づいてエンジンの予兆保全を行うとともに、燃費効率の向上や航空機の稼働率向上といった効果を生み出している。

誰でも AI を活用できる環境作りに取り組む

AI もマイクロソフトが大きな投資を行っている技術の 1 つだ。CEO(最高経営責任者)のサティア・ナデラが昨年 9 月に「AI の民主化(Democratizing AI)」というキーワードを打ち出し、財務的な体力に優れる大企業だけではなく、個人や中堅・中小企業でも AI を利用できるような環境作りに取り組んでいる。

その成果として、マイクロソフトではすでに多くのソリューションを提供(図)。その 1 つが、専門知識がなくてもビジネスの中ですぐに AI を活用できるサービスという位置付けの「Cognitive Services」である。

マイクロソフトが提供する AI 関連サービス - Cognitive Services (機械学習でトレーニング済みのコグニティブ (認知)モデルを API を通して提供)、Azure Machine Learning (機械学習のアルゴリズムを Web 上で設計・利用できるクラウド サービス)、Microsoft R (統計解析の専門家向けの「R 言語」をクラウド サービスおよびオンプレミスで提供)、Cognitive Toolkit (CNTK) (大規模データを活用する機械学習のシステムを開発するためのフレームワーク)
IT の知識のない利用者から専門家までを対象として、クラウド上で 4 種類のサービスを提供する

これは、「コグニティブ(認知)」というテクノロジーを利用可能にしたクラウド サービス。「映像」「音声」「言語」「知識」「検索」という 5 つの領域において、利用者側のシステムにつないで使えるようにされている。

AI の領域でも、ビジネスに活用して大きな成果を上げている企業がある。デジタルトランスフォーメーションの文脈で頻繁に取り上げられる米ウーバー・テクノロジーズは、その代表例だ。

外部の登録者をドライバーとして採用している同社では、ドライバーの本人認証のために Cognitive Services を活用。スマートフォンに搭載したアプリで、ドライバーが自分の顔を撮影すると本人か否かを認知する仕組みだ。スマホで撮影された画像データがクラウド上に送信され、あらかじめ登録してある顔写真のデータと同じ人物であるかどうかを Cognitive Services が判別する。その結果、毎時、数千人のドライバーの認証を迅速かつ正確に実現しているという。

顧客の問い合わせに最適な回答を AI が生成

日本でも、マイクロソフトの AI 技術をビジネスで活用している企業が増えつつある。SBI リクイディティ・マーケット(SBI LM)である。同社は、SBI グループの中で外国為替証拠金取引に関わるマーケット機能の提供やシステム開発を担う企業。同グループ内の SBI 証券や住信 SBI ネット銀行、SBI FX トレードに対し、安定したマーケット情報と取引基盤を提供することが重要なミッションだ。

同社は今年から、SBI FX トレード向けに顧客からの様々な問い合わせに対して、リアルタイムで返答するシステムの開発に取り組んでいる。新規の口座開設が急増している SBI FX トレードの顧客対応業務を効率化するためだ。「この自動応答システムに、Cognitive Services をはじめとして、マイクロソフトのクラウドサービスを活用していきます。そのため、1 月の企画開始から開発を経て短期間での稼働開始を見込んでいます」と SBI LM の吉川 裕太氏は説明する。

このシステムは、チャットによる問い合わせに対して、リアルタイムで適切な回答を作成する仕組み。まずは為替や取引に関する定型的な質問に対しての自動回答の提供を行い、そこで得た蓄積データ、問い合わせ履歴を機械学習することで、精度向上を目指す。「平日の夜間や休日など、コールセンターが営業していない時間帯でも、お客様のお問い合わせに対応していきます。将来的には口座や取引状況などを踏まえた上で、お客様の行動や心理までをも理解して、人間と同等に対応できる品質まで精度を高める計画です」と抱負を語る。

このほか、IoT や AI など様々な技術を使った実証実験も行われている。ヘッドウォータースの協力のもとで行われている「居酒屋接客ロボット」がそれだ。これは飲食店のテーブルに設置された AI 搭載のロボット(Pepper)が接客を行うもの。コグニティブ技術によって各顧客の顔を覚え、挨拶したり、楽しませたりする。具体的な仕組みとしては、店頭のロボットや端末などから、店頭での顧客行動や POS 売上などの膨大なデータを取得し、クラウド上にある Azure IoT Suite で解析。解析情報を基に、顧客のニーズをリアルタイムで把握し、顧客の好みにあった商品を端末に表示したり、提案することが可能だ。ロボットを介して、顧客とスタッフの距離を縮め、リピート客獲得につながるという。

今後は、企業規模や業種で、最先端技術をビジネスに活用していく流れが加速していくことになるだろう。

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