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マイクロソフト業界別の記事

※ この記事は 2018年05月31日に DX LEADERS に掲載されたものです。

2018年4月4日から6日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「第2回AI・人工知能EXPO」(以下、AI Expo)。3日間の来場者数は、なんと約4万6,000人。各ブースに大勢の人が来訪して、AI・人工知能への関心の高さをうかがえた。

今回のAI Expo のブースでは、チャットボットやディープラーニングに関するソリューションが多数を占めた。一方で、他社と差別化したソリューションを展示し、注目を集めたブースもある。そこで、本記事ではその中でも3つのブースについて紹介し、今後のAI・人工知能の可能性について考察したい。

小売、製造業でAI の活用を推進する「ABEJA Insight」

AI Expo の中央で大規模な出展していたのが、IoT、Big Data、Deep Learningなどを統合したプラットフォームを提供している株式会社ABEJA(以下、ABEJA)だ。AIの世界では、エンジンに注目が集まりがちだが、ABEJAはAIエンジンを周辺のテクノロジーを組み合わせることで他社との差別化を実現している。

ABEJAのプラットフォームを活用するとどのようなことができるのだろうか。その一例として、ブースでは画像解析の適用例を紹介していた。カメラを通じて動画を収集し、それをAIで分析させ結果をアウトプットするまで、ABEJA であればワンストップで提供できる。

また、ABEJAは業界に特化したサービスを提供するために、AIを活用した事前予測サービス「ABEJA Insight」を展開している。現在は、小売・流通、製造業、インフラ企業向けにSaaSとしてソリューションをリリースしている。

具体的にどのようなことを実現するのか、例えば小売・流通向けの「ABEJA Insight for Retail」であれば、店舗に設置したカメラなどのデバイスを通じて顧客の動きを分析して数値化することで消費者行動を指標化する。その後、POSや天気などの情報を組み合わせて、店舗のどこに課題があるのか発見することができるのだ。また、改善施策の実施や効果検証などもABEJAでサポートを行う。このABEJA Insight for Retailは、すでに420店舗に導入されており、PARCOや Francfranc などの大手小売店で利用されている。

また、製造業向けの「ABEJA Insight for Manufacture」は、工場で実施される自動検品や異常検知、危険予測、商品仕分けなどに活用できるという。事前にデータが用意されていれば、ABEJAのプラットフォームとAPIで連携して運用することが可能だ。

今後のAIビジネスは、ABEJA のようにAIエンジンとその周辺サービスを組み合わせたトータルサービスを提供できるかどうかが企業競争における重要なポイントになるかもしれない。

イスラエルのセキュリティとAI技術を用いたIoT管理ソリューション

サイバーセキュリティで世界最先端の技術を有するイスラエル。AI Expo では、そのイスラエルのセキュリティソリューションを展示している団体があった。それが、日本イスラエルビジネス協会(以下、イスラエルビジネス協会)だ。

イスラエル協会は、AI Expo で2つのセキュリティソリューションを展示していた。そのうちの一つが、AI技術を用いて IoTデバイスのセキュリティ管理を行う「ShieldIoT」だ。ShieldIoTは、IoTデバイスを安全に管理・運用して、「DoS攻撃」など許可されていない通信を自動で遮断することができる。

IoTデバイスをこのように一元管理できる
ログはクラウドで一元管理をしており、異常検知はAI技術を用いてデバイスの異常な挙動を検知することが可能だ。これにより、ShieldIoTを用いることで迅速なセキュリティ対策の反映を行い、増大するデバイスの最適化と制御をスムーズに対応する。また、セキュリティに関する専門的な知識がなくても運用でき、IoTの活用が当たり前の現代において求められる要素であろう。AIを用いたネットワークやデバイスの異常検知は今後さらに進むと予想できる。

イスラエルビジネス協会では、AIを用いたソリューションをもう一つ展示している。それが、「VisionGrid」だ。VisionGrid は、未分類のファイルをAIによって自動で識別・分類して、機密性に応じてセキュリティ強度を設定してファイルを保護するというもの。ファイルの変更履歴なども追跡することができ、高度なセキュリティ対策が求められる金融機関や知的財産の資料を持つ製造業などで導入効果が見込める。

宇宙ビジネスを促進させる!衛星画像解析ソリューション

現在、多くの注目を集めている宇宙ビジネス。アメリカ、ヨーロッパ、中国、インドなどがしのぎを削っているが、日本でも宇宙ビジネスへの関心が日々高まっている。その宇宙ビジネスに関連するAIを活用したソリューションを展示していたのが、地理空間アナリティクスビジネスを展開する企業、オービタル・インサイトだ。
オービタル・インサイトは、2017年末にアビームコンサルティング、伊藤忠およびスカパーJSATと再販パートナーシップ契約を締結して、日本でのビジネス展開を進めている。

主なビジネスは衛星によって収集した大量の画像を、AIやデータサイエンティストによって分析を行い、その結果を顧客へ提供するというものだ。単にソリューションを提供するだけでなく、顧客にとって必要な仮説の立案とその提案、実際の運用まで含めたトータルサービスを売りにしている。

宇宙ビジネスで現在有力視されているのは、この衛星を活用して取得したデータの活用だ。これらのデータが価値を持ち、利用したいという企業も増えているという。そして、それを推進する上で、AIを活用した画像解析技術は必須になるだろう。今後は、衛星から撮影した動画を分析するサービスも登場するかもしれない。

AI の活用範囲は今後ますます広まっていく

冒頭に述べたとおり、2018年のAI Expo ではチャットボットや自然言語処理などテキストデータを扱うソリューションが数多く出展されていた。また、現在ではバズワードのように広まっているディープラーニングを売りにしたブースも多数あった。

その中でも、ここで紹介した3つのブースは他社との差別化が図られ、AIの新たな可能性を示すソリューションであるといえよう。特に、AIを用いた画像や動画の分析技術は、今後ますます発展していく。テキストが主流だったインターネットや SNS において、今後は画像や動画の比率が増え、その活用が大きなテーマになるのは間違いない。

また、多くの企業が課題としているセキュリティ対策でも、AIの活用は大きなテーマだ。これまでのセキュリティ対策は、新種の攻撃手段への対応がどうしても遅れがちだった。しかし、AIをうまく活用することで、この状況が改善されるかもしれない。

AI Expo は2019年4月にも開催が予定されている。来年はどのようなソリューションが展示されるのか、今から期待したい。

取材・文:山田 雄一朗