
地域の交通課題を解決する MaaS ソリューションのサンプル コードを公開
令和元年 (2019 年) から国土交通省と経済産業省の主導のもと、新しいモビリティ サービスの社会実装を通じた移動課題の解決および地域活性化を目指す地域や企業を支援する「スマート モビリティ チャレンジ」プロジェクトが進められており、全国各地でさまざまな取り組みが進められています。これらの取り組みは MaaS (Mobility as a Service) と呼ばれ、交通移動をサービス化して、地域の居住者や旅行者、働く方たちが、いつでもどこへでも移動できるようなサービスを提供していこうという試みです。
日本マイクロソフトにおいても、2019 年 8 月に MaaS リファレンス アーキテクチャを発表し、Microsoft Partner Program を通してパートナー企業とともに MaaS の取り組みを支援してきました。また 2021 年 5 月には LINE 株式会社と「Microsoft Azure」パートナー企業との全国の MaaS の普及拡大を支援するための共同プロジェクト (以下、共同プロジェクトと記す) を開始しました。
今回、LINE アプリを使った MaaS ソリューションのサンプル コードを公開いたしましたのでご紹介します。
今回の取り組みは、共同プロジェクトの先行事例として日本マイクロソフトが支援してきた長野県千曲市のワーケーション参加者向け移動サービス「温泉 MaaS」で提供されている簡易的なタクシー配車予約機能を基に、Microsoft Azure の最新機能である Azure Static Web Apps と Cosmos DB を用いて、Vue.js と TypeScript を使ったアプリケーションとして新規に構築したものをサンプル コードとして公開するものです。サンプル コードは自由に利用できます。
このサンプル コードでは、タクシー配車予約機能として以下の機能を提供しています。
- 利用者 (観光客など) は MaaS 事業者が提供する LINE 公式アカウントのリッチ メニューからタクシー配車予約機能 (LIFF アプリ) を呼び出して、タクシー配車予約を依頼できます。
- タクシー会社は、利用者が予約登録した内容を Web ブラウザで一覧表示し、配車手配中、配車完了、配車キャンセルなどのアクションを通じて、利用者にメッセージ連絡を送信できます。
このサンプル コードは、2021 年 9 月 15 日に開催されたオンライン ハンズオン イベント「【地方活性化!】MaaS Hands-On with Microsoft Azure【ミニアプリ】」に際して作成されたサンプル コードを、株式会社ゼンアーキテクツ様のご支援によりさらにブラッシュ アップしたものです。ブラッシュ アップした内容は以下の観点です。
- js: フロントエンドのフレームワーク (Vue3.x)
- Vite: フロントエンド アプリケーションのビルド
- TypeScript: プロジェクト全体のプログラミング言語として利用
- LIFF: LINE のログインや Messaging API を利用
- Azure Static Web Apps: フロントエンド ホスティング + バックエンド API 基盤
- Azure Cosmos DB: バックエンドのデータ ストア
- GitHub Codespaces: 開発環境
- GitHub Actions: CI/CD 実行環境
- Terraform: Infrastructure as Code
― 温泉 MaaS とは
長野県千曲市では、株式会社ふろしきやと信州千曲観光局が中心となって、ワーケーションによるまちづくりの取り組みを行っています。ワーケーションとは、ワークとバケーションを掛け合わせた造語であり、観光地に滞在してリモート ワークを行ったり、地域の方たちとの交流を通した新しい仕事の開拓などを行ったりすることを目指したものです。千曲市では、温泉街やそこにある足湯、観光会館、カフェ、寺院、山城、棚田、河川敷など既存の観光資源をワークスペースとして提供しており、ワーケーション参加者にはさまざまな好きな場所に好きな時間に移動してワークしてもらいたいということから、ワーケーション参加者向けの移動サービスとして「温泉 MaaS」を地域のエンジニアとワーケーション参加者が一緒に作り上げています。「温泉 MaaS」では、最初はタクシーを気軽に配車予約できる機能をリリースし、その後、温泉旅館が貸しているレンタサイクルの貸し出し機能、ワークスペースの情報検索機能、チャット ボットによる問い合わせ機能を追加し、直近ではそれまで紙チケットで運用されていた温泉 MaaS チケットを電子化したデジタル チケット機能が追加されました。
参考: